定年退職の節目を機に、再就職ではなく「起業する人」が増えてきています。しかし起業しても、当然全員が上手くいくわけではありません。成功する人と失敗する人がいますが、両者のあいだにはどのような違いがあるのでしょうか。本記事では、とある大企業に勤めていた対照的な2人の事例とともにシニア起業の成功例と失敗例について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
見下していたのに…「年収4,000万円」だった61歳・元大企業取締役、退任から5年後、「年収900万円」だった元同期を妬んだワケ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職後の起業で成功する人と失敗する人の差

同じ定年退職後の起業でも成功する人と失敗する人の差を森原さんと石田さんのケースの比較で確認してみましょう。

 

1.「得意+好き+需要がある」を仕事にする

森原さんは「会社が好き」でしたが、退職後の個人事業として行うには自分では得意と思っていた仕事の分野にどれほどの需要があったかは疑問です。その点、石田さんの場合は個人をマーケットに裾野の広い分野を選んだことが成功の要因でした。

 

2.いつまでも前職の立場にしがみつかない

石田さんの起業に対するモチベーションは明確でしたが、森原さんの場合しょせんは会社生活への未練から始まっています。いつまでも以前の会社関係にしがみつくような中途半端な起業は、本人の前職での経験値も退職後の時間経過に伴い劣化するなかで失敗に終わるケースが多いようです。

 

3.早めにスタートする

起業に遅すぎることはないにしても、早めにスタートする方が助走期間も長く取れて成功の確率は高まります。実際石田さんの場合も軌道に乗ってきたのは独立してから3年目でしたが、慌てることなく足場を固めていくことができました。

 

4.定年退職後の資金計画を起業の成否にかかわらずしっかりと立てる

石田さんの場合は仮に起業が上手く行かなくても、減額なく公的年金を受給できる65歳までの資金計画も立て、開業後もしっかりとしたキャッシュフロー管理をしていました。一方、森原さんには計画性のない浪費癖もあり、また現役時代からのお金に関することを人任せにしてしまう性向も重なり行き当たりばったりでした。
 

 

山田 信彦

ニックFP事務所

代表