安定した企業のサラリーマンや公務員は、老後資金対策として不動産投資の勧誘を受けることがよくあります。節税効果もあり、家賃収入を生み出す不動産投資ですが、セールストークのメリットばかりに目が眩むと痛い目に遭うことも……。本記事では宮崎さん(仮名)の事例とともに、中高年世代が始める不動産投資の注意点について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。
年収800万円の中間層だが…50歳会社員〈ねんきん定期便記載の見込額〉に取り乱した結果の大惨事。「オレもこっちの立場になったか」と複雑心境【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

50歳で受け取る「ねんきん定期便」をみて動悸が…

50歳になった某中堅企業部長職の宮崎さん(仮名)の年収は額面で800万円弱です。宮崎さんには扶養範囲内のパートで働く妻と、大学生と高校生の子どもがいます。10年程前に買った自宅マンションの35年ローンは宮崎さんが75歳になるまで続きますが、60歳定年時にもらう予定の退職金で一括返済することを考えています。

 

一般に「住宅資金」「教育資金」と「老後資金」の3つを併せて「人生の3大資金」といいますが、宮崎さんの場合、これまで通常の生活費以外では住宅と教育関連の資金を賄うのに精いっぱい。老後資金にまではまったく手が回っていない状態でした。それでも60歳定年退職後は再雇用で働き続け65歳から公的年金を受け取り始めれば、自宅も確保済みなので夫婦2人の生活はなんとかなると思っていました。

 

ところが、50歳誕生月に受け取ったねんきん定期便をみて急に動悸が高まりました。50歳以降の定期便には現状収入ペースで60歳まで働き続けた場合の65歳以降の年金額が記載されているのですが、その金額は奥さんの分も併せてみると額面ベース月20数万円程度にしかならないのです。

 

自宅購入と教育費負担が大きく、これまでの貯えもあまりない宮崎さんは、初めて真剣に老後資金対策を意識するようになり、情報収集を始めました。

仕事上の知り合いに勧められた「区分所有マンション投資」

そんな宮崎さんに取引先知人が「自分もやっている」と勧めてきたのが、中古の区分所有マンションへの投資でした。老後資金対策に焦っていた宮崎さんは話だけでも聞いてみようと、彼の口利きで販売業者に会ってみることに。するとさっそく都内私鉄沿線の最寄り駅まで徒歩7分、広さ25m2で1Kの築15年程の物件を紹介されました。

 

販売価格は2,500万円弱ですが、頭金の一部と販売仲介手数料を含む諸経費合計の約200万円を準備できれば、宮崎さんの属性も踏まえて残金は物件を担保に30年ローンが組めること、賃貸管理は空き室家賃保証も含めて賃料10%でその販売仲介会社がすべて引き受けてくれることなどの説明を受けました。

 

また、毎月ローン返済額は当初の想定手取り家賃とほぼ同額になるものの「減価償却」という仕組みを通じて、給与から支払った税金の一部を毎年取り返すことができるため、その分がプラスになるし、インフレの世の中ではいずれ賃料も購入物件資産価値も上昇していくであろうとのことです。

 

「ローン完済後にはマンションは名実ともに資産となりますし、毎月家賃は年金の足しに生涯なります」との説明のあとに、ほかにも説明を受けた物件の購入希望者がいることを聞かされた宮崎さんは急いで購入を決意しました。