2024年3月19日、日本銀行は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除する見直しを決定しました。これにより、消費者にとって直接的に関わってくるのが、住宅ローンの金利です。住宅ローン金利の上昇に耐えられるライフプランを立てるには、どうすればよいのでしょうか? Aさん夫婦の事例とともに、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収800万円の30代共働き夫婦…予算オーバーの「住宅ローン6,000万円」を組むために「捨てた」生活必需品【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

5,000万円の物件か、3,700万円の物件…マイホームをどちらにするか検討

<事例>

夫Aさん(32歳男性):会社員 年収420万円、普通自動車所有 自動車ローンなし

妻Bさん(32歳男性):会社員 年収380万円、普通自動車所有 自動車ローンあり

子供 5歳

子供 2歳

 

夫のAさんは東北地方在住の会社員です。

 

子供の小学校進学が迫っているため、学区を決めると同時に住宅を購入する計画を立てました。
希望としては、子供2人を大学まで進学させ奨学金を利用しないことでした。

 

希望する立地をみつけ住宅メーカーに試算をしてもらったところ、土地込みの見積もりは5,000万円。かなり高いなという印象を受けました。5,000万円のうち、土地代が1,500万円です。小学校と中学校が近く、バス停も徒歩3分のところにあります。スーパーマーケットも徒歩15分程度。小学校までの通学で大きな道路を渡る必要がないためさほど心配がありません。

 

利便性がいいことは理解できるものの、できれば4,000万円以下に抑えたいとの意向で、違う土地の提案も受けました。それは価格500万円のかなり郊外の立地です。バス停は見当たらず、小学校はあるものの子供の足で徒歩30分以上かかります。暗くなってから1人で下校するのは心配になるような場所です。スーパーマーケットまでも自動車を使わなければ行けません。この土地に最初の見積もりよりも小さな建物を建てれば、資金計画は3,700万円になるようです。

 

5,000万円の物件と、3,700万円の物件。一長一短があり決めきれないため、FPの意見を聞いてみることにしました。

車を減らすと劇的に家計が変わる

FPからの回答は簡単なものでした。

 

・5,000万円の物件も返済は可能だが、老後資金はギリギリ

・3,700万円の物件は老後資金にゆとりが出るがQOL(生活の質)は落ちる

・5,000万円の物件を買い、自動車を一台減らせば3,700万円の物件の場合よりも老後資金が増え、QOLは維持でき、将来の金利上昇にも対応の余地が生まれる

 

「つまり、車を一台にして5,000万円の物件がいいと思います」とFPが言います。驚くAさん夫婦。

 

「でも、この田舎で自動車は必需品ですよね。公共交通機関が壊滅状態ですよ。東京のようにはいきません」

 

FPが答えます。「その実情はとても理解しています。しかし、簡単に計算してみると次のようになります」

 

物件価格5,000万円の場合(金利1%)
利息 927万9,814円
支払い総額 5,927万9,814円

 

物件価格3,700万円の場合(金利1%)
利息 686万7,000円
支払い総額 4,386万7,000円

 

差額 1,541万2,814円

 

これに対して自家用車一台を今後40年間所有し続けた場合は、

 

車検費用 260万円
自動車税(年額3万9,500円) 158万円
自動車保険(年間8万円) 320万円
ガソリン(月1万5,000円) 720万円
メンテナンス費用(年3万円) 120万円
買替費用(一台200万円を4回)800万円

 

合計 2,378万円

 

住宅ローンの支払総額との差額は836万円になります。もしこれを資産運用に回すことができたら、より大きな金額になります。