孤独死があった不動産物件は、その後どうなるのでしょう。孤独死の場合、死亡から日数が経過していると、遺体の腐敗が進行し、家が凄惨な状況となることもあり得ます。本記事ではBさんの事例とともに、戸建て自己所有住宅内での孤独死と、その後の対応について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
年金月10万円、子のいない78歳伯父逝去で警察から連絡が来て…甥が直面した、まさかの事態。「まるで夏場の生ごみ袋に顔を突っ込んだよう」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

心理的瑕疵物件を空き家として所有し続けることのデメリット

現実的には、建物をきれいに清掃し、名義をBさんに相続登記して当面のあいだ所有し続ける必要がありそうです。しかし空き家は風通しが悪く劣化が進む恐れがあります。台風などで窓ガラスが割れ、そこから侵入した野良猫など動物が住み着くと近所の住民に迷惑をかけてしまいます。

 

さらに時間が経過すると、雪の重みで屋根が落ちてしまうかもしれませんし、シロアリで躯体が劣化し地震で倒壊するかもしれません。遠方から建物の保全のためだけに通うわけにもいきません。遠方の地方都市に築古の空き家を所有するのはデメリットしかありません。

 

このままBさんが亡くなると、今度は子供たちにこの建物を押し付けることにもなります。

検討すべき「相続土地国庫帰属制度の活用」

2023年4月から、相続土地国庫帰属制度がスタートしています。これは相続によって取得した土地が不要である場合、国に返還できるという制度です。Bさんのように「売れない理由がある土地」「もう所有する意思がない土地」を国に引き取ってもらう制度なので、検討する価値はありそうです。しかしこの制度にもデメリットが存在します。

 

・建物は解体しなければならない

・審査手数料と10年分の管理費用がかかる

・10年分の管理費用は、市街化区域や用途地域の場合は面積によって決まる

・接道していない、ごみが残っている、他人が使っている土地などは返還不可

 

Bさんの場合、

 

建物の解体費用 200万円

審査手数料 1万4,000円

10年分の管理費用231m2で86万2,750円

 

合計 284万750円

 

約284万円を支払って国に返還するということです。「さ、さすがに高すぎないか……」Bさんは悲鳴をあげます。費用と引き換えに安心感が得られるのでメリットのほうが勝る場合には利用すべきでしょう。

 

しかし将来的に時間とともに心理的瑕疵が希釈され、売却に成功するかもしれません。国庫に返還するか、時間をかけて売却を目指すのかは、立地や相続した人の年齢にもよるでしょう。また地域に寄っては心理的瑕疵物件を積極的に買い取る業者もあります。専門家のアドバイスをもらいながら、あらゆる選択肢を検討してください。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表