孤独死があった不動産物件は、その後どうなるのでしょう。孤独死の場合、死亡から日数が経過していると、遺体の腐敗が進行し、家が凄惨な状況となることもあり得ます。本記事ではBさんの事例とともに、戸建て自己所有住宅内での孤独死と、その後の対応について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
年金月10万円、子のいない78歳伯父逝去で警察から連絡が来て…甥が直面した、まさかの事態。「まるで夏場の生ごみ袋に顔を突っ込んだよう」【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

この家をどうしたらいいのか?

Bさんは姉のCさんと相談し、お金を出し合って特殊清掃業者を依頼しました。家の中の物を一掃し、とりあえず耐えられないほどの悪臭のもとになっている部分を清掃、消毒してもらうことに。

 

当初Bさんは、清掃が済んだこの建物と土地を売却できるのではないかと考えていました。最悪でも建物を解体すれば土地だけでも売却できるものと想定していました。自殺や他殺ではあるまいし、病気で亡くなったのだからクリーニングと多少のリフォームで売却できるのではないかと思っていたのですが……。

 

地元の不動産業者に問い合わせたところ、予想外の事実を知ることに。「特殊清掃が入った孤独死の物件は、買い手や借り手に告知する義務があります。築年数が古いことも加わって、おそらく売るのは難しいのではないかと思います」と告げられたのです。

 

特殊清掃が必要なかった孤独死については告知の義務がないというルールが、2021年に国土交通省によって「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」として制定されました。しかし、今回のように特殊清掃をした場合、自殺や他殺の場合は取引の際に告知が必要になるとのこと。いわゆる「心理的瑕疵物件」と呼ばれるものです。このガイドラインでは事案が発生してから3年を経過すると「時間的希釈の原則」によって告知をしなくてもいいということにもなっています。ただしそれは賃貸の場合のみで、売買のケースでは明記されていません。

 

Bさんはそんなものかと思ったのですが、さらに質問してみました「では解体をして、土地だけ売却をするのはどうでしょうか」。

 

不動産業者が言います「建物がなくても告知の義務は残りますが、買い手の心理的に多少は抵抗感が和らぐかもしれません。値段が多少安かったら買い手はつくかもしれません。しかし、それは都市部での話でしょう。この田舎では警察が出入りして現場検証したことを周辺住民が覚えていて、告知の義務がなくなっても住民が告げてしまうこともあり得ます。売却には相当な時間がかかることもありえます」。

 

更地を購入しようと見学にきた人を見かけると、近づいていって「ここは事故物件」だと教えてしまう近隣住民の存在はめずらしくないのだとか。そうなると時間希釈の原則も告知ガイドラインも無意味になります。

 

聞いてしまった以上は避けたいと思うのが人の心理です。また、更地にしてしまうと固定資産税の負担が大きくなり、売却に時間がかかると年々重荷になっていくとのこと。そもそも解体するには安く見積もっても200万円以上の費用がかかり、立地の相場的に土地を売却できたとしても赤字になります。「田舎ではこんなに土地の価値が低いのか……」とBさんはがっかりし、売却を諦めることになりました。