年金の繰上げ・繰下げ…額面と手取りで考える「損益分岐点」
繰上げ受給と繰下げ受給で議論されるのが、「繰り上げたほうが得」「いや繰り下げたほうが得」という議論です。
そこでよく言われるのが「損益分岐点」。厚生年金受給者の平均受取額は、併給の国民年金と合わせて月14万4,982円。年間受取額174万円だとして考えてみます。
仮に60歳まで繰り上げて年金の受け取りを開始すると、80歳10ヵ月で65歳で年金を受け取ったほうが得ということになります(関連記事:『【早見表】年金はいつ受け取るのが得?「額面」と「手取り額」の損益分岐点』)。
仮に75歳まで繰り下げて年金の受け取りを開始すると、86歳11ヵ月で、65歳で年金を受け取るよりも得することになります。
ただし、これは額面で考えた場合。年金は雑所得なので課税対象。手取り額は額面のおよそ85~90%程度になります。また居住地や家族構成など、人によって損益分岐点は変わります。仮に「東京都在住・独身・扶養家族なし、収入は年金のみ、所得控除は基礎控除と社会保険料のみ」だとすると、60歳まで繰り上げたときの手取り額で考える損益分岐点は82歳2ヵ月、75歳まで繰り下げたときの手取り額で考える損益分岐点は89歳2ヵ月になります。
厚生労働省の『令和4年 簡易生命表』によると、男性の生存率が50%を下回るのは「81~82歳」にかけて。つまり年金の総受取額で考えると、65歳で年金を受け取るよりも、繰上げ受給したほうがダンゼン得。また繰下げ受給するなら68歳まで。それ以上、繰り下げるなら長生きしない限り損をすることになります。
ただ、結局は人の寿命は誰にもわからないもの。損か得かは、単に金額だけでは図れず、人それぞれライフスタイルや考え方によるところが大きいでしょう。
――いつまで生きられるか分からないから、早く年金を受け取りたい
――いつまで生きられるか分からないから、受取額は多いほうがいい
――年を取って病気をしてしまっては、年金額が増えても意味がない
――年を取って病気をしたときのために、年金額は多いほうがいい
これらはすべて、その人にとっての正解。色々と語られる年金の損得分岐点は参考に、自身が受け取るベストタイミングを検討することが、最も後悔のない方法だといえそうです。
[参考資料]