日本の公的年金制度。細かな決まりごとが多く、知っていると知らないでは、大きな差となることも珍しくはありません。今回は年金の「繰上げ受給」「繰下げ受給」について考えていきます。
年金は「いつ受給する」のが得か?年金の繰上げ・繰下げ受給「額面と手取り額」の損益分岐点

最大24%減の「年金の繰上げ」と、最大84%増の「年金の繰下げ」

最近、よく耳にする「年金はいつからもらうのが得か」という議論。そのカギを握るのが、「年金の繰上げ受給」と「年金の繰下げ受給」です。

 

老齢基礎年金・老齢厚生年金の受取年齢は原則65歳。希望して、60歳~65歳になるまでの間に受け取るのが「年金の繰上げ受給」、66歳~75歳までの間に受け取るのが「年金の繰下げ受給」です。

 

年金の繰上げ受給は、1ヵ月年金をもらうのを早めるごとに0.4%減額となり、最大24%の減額となります。そのほかのポイントは大きく4点。

 

①一度繰上げて年金の受給が始まると、取り消すことはできません。一生、減額された年金が続きます。

 

②繰下げ受給では老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることができますが、繰上げ受給は、老齢国民年金と老齢厚生年金、同時でなければなりません。

 

③繰上げ受給をすると、国民年金の任意加入はできなくなります。国民年金に未納があっても、年金を増やすことができなくなります。

 

④老齢基礎年金を繰上げ受給すると、65歳に達したとみなされ、65歳未満が対象の障害基礎年金がもらえません。また妻が寡婦年金を受け取っているときに繰上げ受給を始めると、寡婦年金を受け取る権利もなくなります。

 

繰下げ受給では1ヵ月年金をもらうのを遅くするごとに0.7%増額となり、最大84%の増額となります。そのほかのポイントは大きく4点。

 

①年金額が増えることで、税金や社会保険料も増えます。思ったほど年金が増えない、と感じることもあるでしょう。

 

②繰上げ受給では老齢基礎年金と老齢厚生年金に繰り上げなければなりませんが、繰下げ受給では片方だけを繰り下げることが可能です。

 

③加給年金や振替加算、特別支給の老齢厚生年金は繰下げ受給の対象外です。また加給年金や振替加算は、年金を繰り下げている間はもらうことはできません。

 

④年金の繰下げ中に亡くなり、遺族が遺族年金を受け取る場合、遺族年金の計算は65歳時点の金額で計算します。遺族は繰下げ受給の恩恵を受けることはできません。