少子高齢化が進む日本。特に地方において人口減少は顕著に現れています。そのようななか、過疎化が進む地域で住宅ローンを組み、家を購入することにはどのようなリスクがあるのでしょうか? 本記事ではAさん夫婦の事例とともに、地方での住宅購入に潜在するリスクについて長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
世帯年収1,250万円、40代・子のいない地方公務員夫婦「一生賃貸で、最後は老人ホームに入りたい」→昭和父「家を買ってこそ一人前だ」…“過疎地域で住宅購入”に待ち受ける悲惨な未来【FPが警告】 (※画像はイメージです/PIXTA)

持ち家を買う年齢的なリミット

しかし、夫Aさんの父親(70歳)が最近、「持ち家を買うなら年齢的にそろそろタイムリミットだぞ」と言うようになりました。

 

父親いわく、いくら公務員でも40歳後半になったら借りられるローンは少なくなる、ということです。「それに、仕事を辞めたら、この田舎では高齢者に家を貸してくれる大家はいない」と力説します。終の棲家をそろそろ用意してはどうかということでした。

 

そういわれても、持ち家に興味のない夫婦。そこで、買うべきかやめておくべきかの判断の参考になればとFP事務所に相談したのです。

キャッシュフローにはまったく問題ないが…

Aさん夫婦が現在住む地域に土地を買い、現在の賃貸と同じ35坪程度の注文住宅を建てるとすると、資金計画は一般的にいくらになるかを計算しました。

 

まず土地は65坪で1,800万円程度が相場です。そして延床35坪の建物として3,500万円。外構費や火災保険などの諸費用を500万円とすると、5,800万円~6,000万円ということになりそうです。

 

「高いなー」と驚くAさん夫婦。FPは言います「もちろん、建物をローコスト住宅にするともっと安くなりますし、土地も郊外にすれば1,000万円を切る物件もあるでしょう。それでも35坪の建物であれば4,000万円弱というところです」。

 

それでも高いと驚く夫婦。「2,000万円くらいで買えるのかと思っていました」と妻Bさん。仮に6,000万円で購入したとして、一年後の43歳から住宅ローンを払っていけるものでしょうか。

 

FPが計算すると、世帯年収の高さと退職金の潤沢さがあるためキャッシュフローはまったく問題がありません。現在の預貯金2,200万円から自己資金として1,000万円入れることでより楽になります。子供がいないこともあって住宅ローンを返済しながらも老後資金はかなり潤沢です。

 

「もし持ち家に興味がないと思うのであれば、無理に買わず、一生賃貸住まいでもいいかもしれません。一定の年齢になったらお2人で有料老人ホームに入居してもいいでしょう」FPはそう提案しますが、夫Aさんは答えます。

 

「僕もそうしたいと思っています。ただ、父親がどうしても家を買えと言うのです。古い価値観の人なので、家を買って一人前だと言うんですよ。孫もいないし、せめて家を建てたところを見せて安心させてあげたいという気持ちが強くなっています」

 

家を買って一人前という価値観を持つ人も多いのは事実ですが、現代社会では危険な場合があります。