夫Aさんが思いついたこと
「実のところ持ち家に興味はないし、安く済ませられるものならそうしたいです。車もあるし土地は郊外にして安くするのはどうでしょうか」と夫Aさん。
たしかに地方都市では探せば坪単価1万円などという安い土地が見つかります。自治体が移住者に手当を給付するケースもあり、土地代を実質ゼロ円にすることも可能です。その土地にローコスト住宅を建て、さらに現状広すぎるとのことなので、建物・土地をコンパクトにしたら、資金計画はかなり抑えられるのは事実です。
しかし、FPはこう答えます。
「2050年にはこの街の人口は40%近く減少する予測になっています。そうなると郊外の住宅地は、言葉は悪いですがゴーストタウンと化す可能性もあります。40年後、ご夫婦が80代になったころには日本がどうなっているか想像つきません。ゴーストタウンとなった街の住宅を手放したくても買い手はいないかもしれません」
「そうだよなあ」と夫Aさん。
「これは勝手な想像ですが、技能系の外国人労働者が今後増えるとしたら、安い住宅地を求めるはずです。周囲の空き家に外国人住民が住み始め、高齢者になってから異なる価値観を持つ住民との意思疎通に苦労することも考えられます。外国人労働者が増えるのは日本経済にとってプラスがありますが、生活の現場では不安を感じる方も多いのです」
「親孝行であれば、住宅以外のことでしてもいいのかもしれませんよ」とFPに諭されてしまいました。どうしても持ち家が欲しいという強い動機がないのであれば、わざわざリスクを背負う必要はないという意見でした。
いくら高所得世帯でも、地方都市では住宅購入のリスクは必ずあるのです。リスクがあっても持ち家を持つ動機があるかどうかが重要です。結局のところAさん夫婦は、住宅購入はしないという結論に至りました。定年退職時にもう一度考えるということです。
地方都市での住宅購入はより慎重に…
これから地方都市で住宅を購入しようとする人は、人口減少のことを考慮したほうがいいかもしれません。人口が減少していながら、現在、建物価格は高騰しています。地価も上昇しています。住宅価格が高騰していながら人口減少を続けているという、コロナ禍の前には想像もしていなかった事態なのです。
2050年になって、「購入価格は高かったけれど、売ろうにも買い手はいない」という最悪の状態になることも考えられます。住み続けたいが周囲が限界ニュータウンと化した場合、老後破綻が現実のものとなってしまいます。
専門家を交えて、慎重にお住いの地域の将来を予測しながら住宅購入をしてください。
長岡 理知
長岡FP事務所
代表