年齢とともに高まる認知症リスク。症状が進むと、自宅での生活も困難になっていきます。そこで頼りになるのが「老人ホーム」。手厚い介護体制を謳う施設も多く家族も安心……とはなかなかいかないようです。みていきましょう。
手厚い介護がウリのはずが…年金13万円・80代母を「老人ホーム」にあずけた娘、初めての面会で感じた「違和感の正体」

母親が入居した「老人ホーム」…パンフレットの記載と違う?

女性が選んだのは実家の近くの老人ホーム。「自宅に近い環境のほうが、母も落ち着くだろう」という判断だったといいます。また年金が月13万円だった母にとって、身の丈に合った費用感も決め手だったといいます。懸念は面会に行くのに片道3時間、月に1回の面会に行けるかどうか……ということ。最終的に手厚い介護体制の謳い文句だったとか。進行していく認知症。この先どうなるのか不安が募るなか、体制が万全であることは何よりも心強いものだったといいます。

 

しかし、入居から1ヵ月、初めての面会のときに「えっ、この施設、大丈夫⁉」と不安に思ったといいます。

 

――聞いていたよりもスタッフが少ない。手厚い介護って聞いていたのに……

 

明らかにパンフレットの記載にあった職員数と比べてスタッフが少ない……施設に対して覚えた違和感。のちにその正体は、単なる女性の勘違いだったことが分かったといいます。

 

女性の母親が入居した老人ホームは「介護付き有料老人ホーム」に分類され、職員の配置基準は要介護1以上の入居者3人に対して、介護・看護職員は1名以上。これがよく知られた「3:1」。もし入居者が30人いたら職員は10名以上、60名いたら職員は20名以上必要になります。

 

ただしここに落とし穴があり、たとえば10名というのはどの時間帯でも10名いなければならない、というわけではありません。10名というのは常勤換算で、常勤職員の月の所定労働時間を基準にした換算方法。日勤・夜勤と2交代制であればシフトが被らない時間帯以外、職員はその半分。シフトが休みの人もいるでしょうから、職員は常に半分以下、というのが実態になります。

 

また住宅型有料老人ホームには職員配置基準がありません。看護職員不在の老人ホームもあり、施設選びの際には注意が必要です。

 

もちろん、女性の母親が入居した老人ホームは、職員配置基準をしっかりとクリアした施設。女性の勘違いがあり不安に思うことはありましたが、謳い文句通りのサービスを受けられているといいます。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/「LIFULL 介護」『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』

厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」

政府広報『知っておきたい認知症の基本』