年齢とともに高まる認知症リスク。症状が進むと、自宅での生活も困難になっていきます。そこで頼りになるのが「老人ホーム」。手厚い介護体制を謳う施設も多く家族も安心……とはなかなかいかないようです。みていきましょう。
手厚い介護がウリのはずが…年金13万円・80代母を「老人ホーム」にあずけた娘、初めての面会で感じた「違和感の正体」

えっ、さっき電話してきたよね…80代の母が認知症に

株式会社LIFULL senior/「LIFULL 介護」が行った『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』によると「老人ホームへの入居を考えるきっかけ」で最も多かったのは「認知症」で46.0%。続いて「認知症以外の疾患」が33.3%。「入院していた」「特に疾患はなかったが将来を考えて」と続きます。

 

認知症といっても症状の程度はさまざま。実際に老人ホーム入居のきっかけになった症状として最も多かったのが「排泄の失敗」で32.3%。「お金の管理ができない」29.0%、「怒りっぽくなる・暴力をふるう」18.2%と続きます。

 

厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、認知症を理由に通院している人は50.5万人。男女別にみると、男性が18.8万人、女性が31.7万人と、女性の認知症患者のほうが圧倒的に多くなっています。その理由は、年齢を重ねると認知症リスクが高くなるから。年齢別に認知症による通院患者の数をみていくと、「65~69歳」で1.2万人、「70~74歳」で3.6万人、「75~79歳」で7.5万人、「80~84歳」で12.8万人、「85歳以上」で24.5万人と推移。70代後半あたりから、認知症患者はぐっと増えていきます。平均寿命から考えると、長生きする女性のほうが認知症患者が多くなるのは当然のことです。

 

――さっき電話したのを忘れて、また電話をかけてきた

 

離れて暮らす80代の母の異変を投稿していた50代女性。年をとれば誰もが思い出したいことがすぐに思い出せなかったり、新しいことが覚えられなかったりしますが、「認知症」と「加齢による物忘れ」は異なります。

 

たとえば、「加齢によるもの忘れ」の場合、朝ごはんのメニューを忘れるなど、体験したことの一部を忘れます。またもの忘れの自覚があるのも「加齢によるもの忘れ」の特徴です。一方で体験したことのすべてを忘れてしまうのが「認知症」。朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまう……といった具合です。また初期には自覚があることも少なくないですが、基本的にもの忘れの自覚はないのが「認知症」です。女性の母も、診断の結果、認知症と診断されたそうです。

 

女性の母親は初期の認知症で日常生活への支障もそれほど大きくなかったといいますが、話し合いのうえ、母親の老人ホームへの入居を決めたといいます。