いまだに持ち家志向の強い日本人。しかし年を重ね、身体の自由が段々と制限されてくると、介護や医療サービスが充実する「老人ホームへの入居」を希望する割合が増えていきます。ただ老人ホームは入居したら安心というわけではなく、退去を選択するケースも珍しくありません。しかも退去に際し、「えっ、聞いてないよ!」と後悔することも……みていきましょう。
年金月13万円・夫を亡くした高齢妻「もっと素敵なところがいいわ」と<入居100日>で「老人ホーム退去」も、遅すぎる決断に後悔

介護が必要になったら…3割が「老人ホームへの入居」を希望

東京都福祉局が行った『令和元年度在宅高齢者の生活実態調査』で、65歳以上の高齢者の住まいを尋ねたところ、64.4%が「持家(一戸建て)」、16.5%が「持家(分譲マンションなど)」、8.4%が「民間賃貸住宅」。「老人ホーム」は0.8%でした。

 

一方で「介護が必要になったときの希望の住まい」について尋ねたところ、「現在の住宅に住み続けたい」が46.8%でトップでしたが、「有料老人ホームに入居したい」5.2%、「高齢者向け住宅に入居したい」が7.3%、「介護保険で入所できる施設に入居したい」が17.6%と、いわゆる「老人ホーム」への入居を希望する人は合わせて3割にも上ります。

 

現状、どれほどの介護を必要としているのかなどでも希望は変わるでしょうし、介護経験の有無も影響するでしょう。ただ「身体の自由が制限されるようになったら、自宅に住み続けるのは難しい」と考えている人が多いことが表れているといえるでしょう。

 

老人ホーム入居に際し、ネックになるのは費用。高齢者施設の場合「入居一時金」というシステムがあります。これは家賃の前払いのようなもので、その金額は0円~数千万円、富裕層がターゲットとなる高級老人ホームになると、億超えという施設も。入居一時金、家賃の前払いという特性上、退去すれば返還されるお金です。

 

さらに月額利用料。食費や管理費、介護保険サービスの自己負担分などが含まれます。厚生労働省の資料によると、介護付き有料老人ホームの平均月額利用料は22万7,039円。最も多い価格帯は「30万円以上」で32.8%。続いて「25万~30万円未満」で18.3%、「20万~25万円」が12.3%と続きます。

 

一方で、老人ホームの入居に際し、どこから費用を捻出するかといえば、まず考えられるのが年金。厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均受給額は月14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均年金月額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円です。また遺族厚生年金の平均受給額は月7万9,557円です。