いまだに持ち家志向の強い日本人。しかし年を重ね、身体の自由が段々と制限されてくると、介護や医療サービスが充実する「老人ホームへの入居」を希望する割合が増えていきます。ただ老人ホームは入居したら安心というわけではなく、退去を選択するケースも珍しくありません。しかも退去に際し、「えっ、聞いてないよ!」と後悔することも……みていきましょう。
年金月13万円・夫を亡くした高齢妻「もっと素敵なところがいいわ」と<入居100日>で「老人ホーム退去」も、遅すぎる決断に後悔

老人ホームの退去は珍しいことではないが…

綿密に、かつ余裕のあるシミュレーションのもと、老人ホームに入居。これで一安心といけばいいのですが、絶対とはいえません。家を借りたことのある人であれば、きっと経験しているはず。

 

――ちょっと自分には合わないなあ

――もっと素敵なところに住みたいわ

 

内見をきちんとしたとしても暮らしてみると違和感を覚えたり、欲が出てきたり……それは老人ホームにおいても同じで、実際に老人ホームの退去は珍しいことではありません。

 

――入居一時金も戻ってくるし、また自分に合ったホームを探そう

 

そう考えて退去を決めたとき、入居一時金の返還金には注意が必要です。入居一時金の返還額は「初期償却率と償却期間」で決まります。初期償却率は入居一時金のうち返ってこない金額の割合。賃貸物件でいえば、返ってくることのない礼金みたいなもの。入居一時金は一定期間の家賃の前払い金であり、この一定期間が償却期間です。たとえば前出の入居一時金1,000万円の施設。初期償却率20%、償却期間7年だとしましょう。この施設を3年で退去することになったら、返還金は450万円程度になります。

 

また『契約後90日以内』のクーリングオフ期間が過ぎれば、初期償却が適用され、その分は戻ってきません。入居後100日で退去となった場合は、まずは1,000万円から、初期償却率20%をかけた800万円、さらに場合によっては10日分は日割り計算され返還されるわけです。

 

――えっ、たった3ヵ月ちょっといただけなのに、200万円も取られちゃうの⁉

 

早く退去を決めたはずなのに……大きな後悔をするわけです。このように老人ホームを検討するなら「初期償却率と償却期間」の仕組みをしっかりと理解したうえで決断を。そうすれば万が一退去となった場合でも、余分なお金を払わずに済むでしょう。

 

[参考資料]

東京都福祉局『在宅高齢者の生活実態調査』

厚生労働省『特定施設入居者生活介護』

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』