長年、連れ添ったパートナーを亡くした妻。おひとり様となってからの生活を支えるのが「遺族年金」です。しかし、この遺族年金、「専業主婦ってズルい」という声が「共働きだった妻」から聞こえてきます。どういうことなのでしょうか。みていきましょう。
年金月16万円・80代夫を亡くした<70代の共働き妻>、専業主婦よりも少ない「遺族年金額」に妬み節「何かの間違いでは?」

おひとり様リスクは男性の5倍…もらえる遺族年金額はいくら?

厚生労働省『令和4年 人口動態統計』によると、1年間に亡くなった人は156.6万人。そのうち男性は79.7万人で、結婚していた人は47.0万人でした。つまり1年間で「夫に先立たれた妻」が47万人にのぼったということです。

 

ちなみに亡くなった女性は76.8万人。そのうち結婚していた人は16.4万人。女性のほうがパートナーに先立たれて、いわゆる「おひとり様」になるリスクは3倍ほど高いといえるでしょう。

 

夫に先立たれ、おひとり様になるリスクが高い妻ですが、万が一のときに生活を支えてくれるのが「遺族年金」です。遺族年金は、国民年金、厚生年金保険の被保険者(だった人)が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。国民年金に由来する「遺族基礎年金」と厚生年金に由来する「遺族厚生年金」があり、受給要件等をクリアすることで、いずれか、または両方が支給されます。

 

遺族年金に関しては、こんな話を耳にすることも。

 

――夫が受け取っていた年金の4分の3をもらっているわ

 

80代の夫を亡くしたお隣さん(70代)との井戸端会議でのワンシーン。「へぇ、わたしも夫を亡くしたら、それくらいもらえるのね」と、同じく70代女性。

 

このように遺族年金では「亡くなった人の年金の4分の3がもらえる」という話は広く知られてます。実際はどれほどの年金がもらえるのでしょうか。

 

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて老齢年金が14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均年金月額は男性が16万7,388円、女性が10万9,165円です。

 

前述の女性の夫が、元サラリーマンの80代、平均的な年金額を受け取り、また国民年金は満額支給だとしましょう。夫に先立たれた70代妻が受け取る遺族年金を考えてみます。

 

まず遺族基礎年金はもらえるのか、といえば、まずもらうことはできません。遺族基礎年金がもらえるのは、「子」、または「子をもつ配偶者」。ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までにある子、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子。70代にもなると、さすがに該当する子がいるとは考えにくいでしょう。

 

では遺族厚生年金はどうでしょう。遺族厚生年金を受けられる遺族は、配偶者、子供、父母、孫、祖父母。優先順位もこの順番です。よって、80代で厚生年金を受け取っていた夫を亡くした女性は遺族厚生年金だけもらえそうであることがわかります。そんな遺族厚生年金、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を受け取ることができます。

 

つまり「平均的な年金額の元サラリーマン夫」が亡くなった場合、国民年金=満額受給だとすると、厚生年金部分は10万円ほど。その4分の3、およそ月7万5,000円が遺族年金としてもらえるということになります。