減価償却で節税できるものといえば、社用車や中古不動産が代表的ですが、富裕層であれば絵画も経費になることをご存じでしょうか。資産が潤沢にある人のなかには、節税や投資目的で絵画を売買する人も増えてきました。本記事では、Aさんの事例とともに、富裕層が行う投資の注意点について、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が解説します。
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事態を知った娘が大激怒

オークションでは買い手が値段を付けます。買い手の懐事情や相場感で値段は変わり、同じ画家の作品でも作品にはそれぞれ良し悪しがあります。そのため、いい作品であれば5倍でも10倍でも価格は上がるのでしょうが、評価が得られなければ買い手も付きません。一度や二度高額で売れたとしても必ずしもその後の作品が高額で売れ続ける、というものでもないようです。

 

Aさんは自分自身で作品をよく見ないで買ってしまっているのも問題です。買うか買わないかを知り合いの画商の助言だけでほぼ決めてしまっています。

 

美術品の投資は、その作品を自分自身で実際に鑑賞し、その美しさや魅力を楽しむことにも価値がありますが、Aさんは絵画を価格だけでしか見ておらず、作品の本当の価値を見る目を養うことはできなかったのです。

 

Aさんは資産家ですから画商に進められて買い集めた作品は1点や2点ではありません。さらに1点の値段は100万円や200万円ですむものではなく、1,000万円を超えるものも数点あります。ほかにも絵画には運搬費やオークションに出すのに十数%の手数料がかかりますし、Aさんのように外部に保管を頼むとそれなりの保管料もかかります。

 

問題はそれだけではありませんでした。不信感を感じたAさんが調べたところ、保管のために画商に預けた作品が数点、なくなっているようなのです。すっかり画商を信用していたAさんはきちんとリストを作っていませんでしたし、画家の名前は思い出せても作品をほとんど見ていなかったせいでどんな絵がなくなったのか思い出せないのです。

 

この話を母親から聞いたAさんの娘は激怒し、すっ飛んできました。すでに嫁いで子どもも2人いるのですが、先日購入を決めた新築マンションの資金の一部や将来の子どもの進学資金などを援助してもらおうと画策していたこともあり、売れるか売れないかわからない絵を買い集めている父親に腹を立て「お父さん、いい加減にもうやめて!」と叫びます。