(※写真はイメージです/PIXTA)

「フリーランスとして仕事を始めたけれど、税務調査のことがよくわからない」「税務調査が来ると人生終わりと聞いたけれど、実際はどうなの?」フリーランスとして事業を行っている方の中には、そのような悩みや不安を抱えている方もいるでしょう。本稿では、税務調査の特徴やフリーランスと税務調査の関係、税理士の役割などについて、税理士法人松本がわかりやすく解説します。いざという時のために、税務調査が来やすいケースや、調査への対処法についても押さえておきましょう。

税務調査が来たら「人生終わり」?

税務調査が来ると「人生が終わる」と感じている方もいるかもしれません。ここでは、税務調査の実態や、フリーランスと税務調査の関係についてわかりやすく解説します。

 

■適切な申告や誠実な対応が大切

結論からいうと、たとえ税務調査が来ても、適正な申告を行っていることが証明できれば何も問題はありません。

 

税金の計算を適切に行っていなかったことが税務調査で判明した場合も、税務調査に誠実に対応しきちんと手続きを行えば、前科がついたり逮捕されたりすることはありません。

 

そのため、日頃から適切な申告を心がけ、税務調査の特徴や対策を押さえておけば、過度な心配をする必要はないといえるでしょう。

 

■フリーランスなどの個人事業主も、税務調査の対象

フリーランスであっても、税務調査は行われます。たとえば、確定申告をする必要があるにもかかわらず申告を怠っていたり、いい加減な申告書を提出したりすると、税務調査の対象となる可能性が高くなります。過去には、事業を行っていなくても税務調査が入った例もあるため、フリーランスの場合は確定申告をしっかりと行いましょう。

フリーランスに税務調査が来る確率は?

税務調査は法人だけでなく、フリーランスなどの個人事業主も対象です。税務調査の目的は「正しい納税額を申告しているか」であるため、法人・個人関係なく、疑わしいところには税務調査が来ると考えてよいでしょう。

 

フリーランスに税務調査が来る確率は、0.5%〜1%ぐらいです。

 

令和3年度の「所得税の実地調査の件数」は31,407件で、「申告納税者数」はおおよそ657万人でした。したがって、令和3年度は約0.5%程度の確率で税務調査が行われたことがわかります。

 

令和3年度は、コロナ禍の影響もあって実地調査の件数は少なくなりましたが、行動制限などが解除されている令和5年度は、1%程度に戻る可能性があるでしょう。

税務調査が来やすいフリーランスの特徴

税務調査はランダムに行われるわけではなく、疑わしい申告を行ったフリーランスに来る可能性が高いといわれています。

 

一般的に、税務調査が来やすいフリーランスは、以下のような特徴があると考えられます。

 

●確定申告を行っていない

●申告にミスや間違いが多い

●税務調査されやすい業種である

●申告漏れの多い業種である

●控除の対象となるように所得調整している

 

原則として、収入があるのにもかかわらず確定申告をしていないと、税務調査が来る確率が高くなります。

 

確定申告をしているかどうかについては、取引先の請求書などから判明するケースや、第三者による密告によって明らかになることがあるため注意が必要です。

 

また、たとえ確定申告をしていても、ミスや間違いが多い場合も税務調査が来る可能性が高いといえるでしょう。国税庁では同業種の収支や計上されたデータを比較できるため、異常値や怪しい点があれば調査対象になります。

 

さらに、経営コンサルタントやシステムエンジニアのフリーランスは、税務調査がきやすい傾向にあるので注意が必要です。

 

また、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるために、所得の上限に達しないように所得調整を行っている場合等は、税務調査が来やすくなるため注意しましょう。

対策をしておけば税務調査は怖くない

前述したとおり、事前にきちんと対策を行っておけば、税務調査は怖くありません。指摘を受けやすいポイントを把握して、説明できるようにしておきましょう。

 

なお、指摘を受けやすいポイントは、

●生活費を経費にしている

●書類に不備がある

といった点です。

 

これらの判断が難しい場合は、専門家である税理士への相談も検討しておくことが大切です。指摘を受けやすいポイントの確認や、修正申告が必要かなどについて的確に判断してもらえるため、安心して調査に臨むことができるでしょう。

フリーランスと税務調査の関係

フリーランスは、個人事業者の一形態です。企業や団体などに雇用されずに、個人で活動します。

 

日本では、申告納税制度が採用されているため、フリーランスは自分が納付すべき税額を自分で計算し、必要に応じて確定申告を行う義務があります。

 

税務調査は、申告内容を確認して税額等を正しく認定する目的で行われるため、適切な申告を行うことがとても大切です。

税務調査の概要

ここでは、税務調査の概要について分かりやすく解説します。

 

■税務調査の対象は、通常「過去3年分」

税務調査の対象となるのは、通常「過去3年間分」ですが、最初から5年分で調査が来るケースもあります。このような場合は、何らかの方法で、税務署があらかじめ収入等を把握していることが多いです。

 

なお、法律上は過去5年間分までが調査の対象となっているため、税務調査の際はその場で追加調査される可能性もあります。さらに、脱税や不正還付などの重大な問題がある場合は、最長7年間まで遡ることがあるため、注意しておきましょう。

 

■税務調査で申告ミスが見つかったらどうなる?

税務調査で申告ミスが発覚した場合、ペナルティとして税金が加算されます。これは、罰金のようなもので、状況によってペナルティの種類や重さが変わります。そのため、普段から正確に帳簿をつけたり、専門家である税理士に相談したりすることが大切です。

 

■税務調査で問題が見つかった場合、どんな税金がかかる?

税務調査で申告ミスが発覚した場合にかかる税金には、下記のようなものがあります。

 

------------------------------------------------------

【税務調査で申告ミスが発覚したときにかかる税金】

1. 無申告加算税

2. 過少申告加算税

3. 延滞税

4. 重加算税

5. 不納付加算税

------------------------------------------------------

 

なお、税務調査の対応で非協力的だったり、調査官に嘘を伝えた場合はさらにペナルティが課せられる可能性もあるため、調査には真摯に対応するようにしましょう。

税務調査の流れと対応策

ここでは、税務調査が来たときの流れと対応策について分かりやすく解説します。税務調査が来ても対応に困らないよう、ポイントを押さえておきましょう。

 

■税務調査が来たときの流れ

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があり、「税務調査」と呼ばれるのは基本的に任意調査を指します。

 

しかし、税務調査を拒否したり、正当な理由がなく帳簿等を提示しなかったりした場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる旨が国税通則法128条により規定されています。

 

一方、「強制調査」と呼ばれるのは、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及するために行われる査察制度のことを指す場合が多く、これは裁判所が発行する令状に基づいて行われます。

 

悪質な脱税が疑われる場合は、法人だけでなく個人(フリーランス)にも査察が来る可能性が高いでしょう。

 

なお、税務調査は基本的に通年行われていますが、4月〜5月と7月〜12月は税務調査が活発に実施されるといわれています。

 

■基本的には「事前通知」が来る

税務調査は、基本的に以下の流れで行われます。

 

1. 事前通知が来る

2. 実地調査が行われる

3. 調査結果が届く

 

出典:国税庁 (https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf)
【図表】税務調査の流れ 出典:国税庁 (https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/02.pdf)

 

【1. 事前通知が来る】

税務調査が決まると、基本的には、電話で事前に「調査日時」や「調査の内容」が伝えられます。

 

しかし、税務署の判断により事前通知が省略されるケースもあります。突然、自宅や店舗などに調査官が訪ねてきて税務調査が開始されることもあるため、油断はできません。そのため、いつ調査が入っても問題がないように、普段から適切な帳簿付けを行うことが大切です。

 

また、取引の相手側にも並行して調査をする「反面調査」が行われることもあります。

 

【2. 実地調査が行われる(2〜3日程度)】

事前通知で伝えられた日に、実地調査が行われます。実地調査の期間としては2〜3日程度が一般的ですが、5日以上かかるケースもあります。領収書などの書類の調査から、事業主への聞き取り調査も行われるため、事前にしっかりと準備をしておきましょう。

 

【3. 調査結果が届く】

実地調査が終了したら、調査結果が届きます。特に問題がなければ「是認通知書」が届きますが、過少申告や無申告が見つかった場合は、修正申告や期限後申告が必要です。内容によって加算税の支払いも必要になるため、調査結果を元に申告をする必要があります。

 

フリーランスが税務調査で失敗しないためのポイント

ここでは、フリーランスが税務調査で失敗しないためのポイントについて解説します。日頃から準備をしておくことで慌てずに対応することが可能となりますので、要点を押さえておきましょう。

 

■無申告や過少申告に注意

無申告や過少申告は、絶対に行わないようにしましょう。前述のとおり、無申告の場合は、取引先などから発覚してしまう可能性が高いと考えられます。そのため、無申告や過少申告は、隠し通せないことを認識しておきましょう。

 

■定期的な記帳

記帳は、日頃から定期的に行うことが大切です。確定申告の直前にまとめて行う方もいますが、ミスや申告漏れの原因になります。日頃から丁寧に記帳する習慣をつけて、適切な申告を行うようにしましょう。

 

■帳簿や書類の保管方法を決めておく

申告漏れを減らしたり、税務調査が来たときに対応したりするためにも、帳簿や書類の保管方法や保管場所を決めておくことが大切です。

 

税務調査では帳簿などを確認されるため、いざという時に慌てないためにも、保管方法を明確にしておくとよいでしょう。

 

法律上、帳簿や書類は保管期間が定められているため、事業年度に分けて保管しておくと確認しやすくなります。

 

■税務調査では誠実な対応を

税務調査では、誠実な対応が何より大切です。調査で不誠実な対応をとると、調査担当者の心象が悪くなり、状況を悪化させることがあります。

 

税務調査は確定申告をしっかり行った方や、収入額が少ない方にも来る可能性はありますので、税務調査の連絡が来ても慌てないように、普段から帳簿付けや書類の整理等を行うとよいでしょう。

専門家に相談することも大切

税務調査に対応するためには、フリーランスであっても、税理士などの専門家へ相談することが大切です。税理士に相談をすることで、税務調査での立ち会いや交渉を依頼することができます。

 

■当日の立ち会い

税務調査の通知が来てからであっても、当日の立ち会いの依頼や税務調査の対策を税理士に依頼することが可能です。

 

その場合、確定申告の問題点や、税務調査当日までに用意しておくべき資料について助言をもらったり、税務調査当日に立ち会って一緒に調査を受けてもらったりすることができます。

 

税務調査官の指摘が法律にそって行われているかの判断を税理士に仰いだり、必要であれば、税務調査後の修正依頼を行うことも可能です。

 

■税務調査での交渉

税理士に相談することの大きなメリットは、税務調査の際に交渉を依頼できる点です。税理士は、無申告の場合は推計課税などの交渉を行うことが多く、申告しているケースでは、申告内容に応じた柔軟な対応をします。

 

このように、税務調査での交渉は、専門的な知識や経験が求められることが多いため、専門家である税理士に依頼をすると安心でしょう。

まとめ

この記事では、税務調査の特徴やフリーランスと税務調査の関係、税理士の役割などについて解説しました。

 

フリーランスであっても、確定申告をしなかったりミスが多かったりすると、税務調査の対象となる可能性があります。そのため、税務調査を回避し、いざ調査が入ったときに慌てないためにも、普段から丁寧に帳簿を付け、正確な確定申告を行うことが大切です。

 

正確な帳簿管理と申告を行っていれば、税務調査を過度に心配する必要はありませんが、少しでも不安な点がある場合は、税務調査対応の経験豊富な税理士にご相談ください。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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