二世帯住宅には、単独での購入よりも大きな資金を準備できたり、介護・子育てなど、親子間で助け合うことができたりというメリットがあります。しかし、建築費の支払いや税金、土地・建物の相続をめぐるトラブルが起きやすいことも事実。本稿ではファイナンシャルプランナーの南真理氏が、二世帯住宅の建築を検討している家庭の相談事例を基に、トラブルを避けるためのポイントについて解説します。
父名義の土地に二世帯住宅を建てる28歳・サラリーマン…建築費・税金・相続のトラブルを避け、親子円満に暮らすポイントは?【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

現金で支払う親夫婦、ローンで支払う子夫婦。二世帯住宅の持分割合は?

建築費の支払いについては、40%を父・謙さん、60%を忠彦さんが負担することになっています。退職金を含む貯えのある親夫婦は現金で、そして、貯えはないものの安定収入のある子夫婦は住宅ローンを組んで支払うことになりました。

 

二世帯住宅の持分割合は、建築費を払う金額と同じ割合で忠彦さん60%、謙さん40%の共有になります。持分割合とは、共同所有物を複数人で所有する場合に、それぞれが持つ権利の割合をいいます。

 

共有で不動産を購入する場合、単独で購入するよりも大きな資金を準備することができる点は大きなメリットです。しかし、売却の際には共有者全員の同意(今回のケースでは、忠彦さんと謙さんの同意)が必要であり、また共有者が亡くなり、相続が発生して共有者が変わると、不動産の権利関係は複雑になる可能性があるため注意が必要です。

 

二世帯で家を建てるメリット・デメリットを明確にした上で、二世帯住宅は共有するのか、共有のまま相続が発生した場合どうするのか。将来起こり得ることをあらかじめ話し合っておくことが重要です。

固定資産税以外にも…住宅の建築にかかる税金

親夫婦は固定資産税の支払いに不安を抱えていますが、住宅の建築にあたっては、それ以外にも多くの税金が発生することになります。ここで、建築時と建築後にかかる税金について簡潔にみていきましょう。

 

建築時にかかる税金

①印紙税

売買契約書(土地や建売住宅の売買契約書)や建築請負契約書(ハウスメーカー等と結ぶ注文建築の契約書)、住宅ローンの契約書を作成するときに必要な税金です。契約書に記載された金額に応じて税額が決まります。

 

②登録免許税

登記手続きの際にかかる税金です。建物や土地の所有権が移るときに法務局で登記をし、不動産を引き渡すタイミングで登録免許税を納付します。住宅ローン利用時も、抵当権設定のため登録免許税がかかります。

 

③不動産取得税

不動産を新たに購入したときや家を建てるときに課税される税金で、取得時に一度だけかかります。土地や建物の引き渡しの数ヵ月後に納付書が届きます。税金の軽減制度もありますので事前に確認しておくといいでしょう。

 

建築後にかかる税金

①固定資産税

毎年1月1日時点で土地や家屋などの資産を所有している人が課税対象となります。固定資産税は3年に一度見直され、毎年4~6月頃に納税通知書が市町村から届きます。共有の場合、固定資産税の納付書は代表者宛に一通届きます。

 

新築住宅(床面積120㎡以下の部分)であれば、新築後3年間は固定資産税が2分の1に減額されます(※1)。また、認定長期優良住宅(床面積120㎡以下の部分)は、5年間、固定資産税が2分の1に減額されます(※2)。

(※1)(※2)いずれも2024年3月31日までの適用。

 

建築後、多くの自治体では直接現地で家屋調査が実施され、固定資産の評価が行われますので、建築前に正確な固定資産税額を知ることはできません。大まかな評価額が知りたい場合には、ハウスメーカーなどに相場を聞いておくことも1つの手です。もしくは、役所の税務課にどのような評価基準になるのか相談してもるのもよいかもしれません。

 

②都市計画税

都市計画税は、市町村が都市計画事業や土地区画整理事業に充てるための税金です。固定資産税と同様に1月1日時点の不動産の所有者に課税されます。固定資産税と合わせて納付書が送られてきます。

 

以上が建築時と建築後にかかる税金です。