50代になると、定年退職や再雇用、再就職、そしてセカンドライフについて考える機会が増えていきます。そこで、60歳以降の就業統計情報とともに、再雇用や再就職の際の給付制度や新たなチャレンジをしたい時に活用できる制度など、退職前に知っておきたい情報について村井美則FPがファイナンシャルプランナーの視点からわかりやすく解説します。
70歳を超えて働くのは、もはや当たり前に?「人生100年時代」に向けて50代が知っておくべき「定年前後の制度」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

長寿化で「50代」から定年後の人生設計をしておく必要がある

その昔、定年退職は55歳が主流でした。例えば、昭和25年の平均寿命は、男性は約62歳、女性は約58歳と、定年から平均寿命までの期間は3~7年程度でした。

 

では、2023年はどうでしょうか。平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳と年々延びています。仮に定年を60歳とすると、平均寿命まで20年以上あります。さらに、2050年までに健康寿命が約7歳延びるとの予測もあるため、定年が65歳に延長されたとしても、年金と資産で生活する期間はますます長くなります。

 

また、高年齢者雇用安定法の改正により、企業は「定年の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度導入」のいずれかを実施する義務があります。しかし、現在でも60歳定年の企業は約72.3%です。それでも時代は少しずつ変化しており、60歳以降、約87%の人が継続雇用されています。さらに、希望があれば、最長70歳までの定年延長が企業の努力義務となっています。

 

昭和25年の平均寿命以上に働くことが、今や当たり前になってきました。今の60代・70代は若々しく、趣味や仕事に熱心に取り組む人が多く見られます。実際、総務省の令和5年労働力調査によると、年代別の就業者割合も年々増加しています。下記を見ると分かるように、70代を超えても、多くの人が働いて収入を得ています。

 

   【年代別の就業者割合】

  • 60~64歳:男性84.4%、女性63.8%
  • 65~69歳:男性61.6%、女性43.1%
  • 70~74歳:男性42.6%、女性26.4%

 

また、内閣府の調査によると、約4割の人が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答していますし、さらに、「70歳位まで」と「70歳超えても」働きたいという人を合わせると、約9割の人が高齢期でも働きたいと強い就業意欲を持っています。

 

働く理由は、生活を維持するためだけでなく、頭や体の健康維持、さらには社会に貢献する実感を得ながら人生を豊かにしていきたいという方も多いでしょう。

 

定年退職が間近に迫っている方にとって、今のうちから定年前後の制度を理解しておくことは、人生設計の一助となります。

「失業手当」と「高年齢求職者給付金」の違い

定年退職後に受け取れる給付金としてまず思い浮かぶのは、雇用保険の「基本手当(失業手当)」でしょう。この失業手当は、被保険者期間や受給資格により異なり、90日~最長330日分の給付金が支払われます。60歳~65歳未満の定年の場合は、90日~最長150日分の給付となります。

 

では、65歳以降はどうなるのでしょうか。65歳以降は「高年齢求職者給付金」となり、30日または50日分の給付金が支払われます。支給条件としては、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あり、失業状態であることが必要です。

 

このように、「失業手当」と「高年齢求職者給付金」では給付の日数が異なります。失業手当を受け取ったほうがいいと考えて65歳よりも前に退職という選択肢もありますが、会社によっては退職年齢によって退職金が少なくなる場合もあるため、いつ退職するのが得策かをしっかり確認しましょう。