相手女性の家族からかかってきた電話
長女Kさんのもとに、相手女性Eさんのご子息から「会って話がしたい」という電話がかかってきました。もしかしたら怒りの抗議なのかもと身構えてしまいました。
結婚をしたがっている2人の子ども全員で、日曜日に近くのホテルで会うことにしました。
相手側の子どももまた3人います。クリニックを継いだ医師である長男、勤務医の長女、大手企業勤務の次男です。
相手側の長男が言いだしました。「母ももう先が長いわけではないので、結婚したいなら好きにさせてあげたい気持ちはあります。亡くなった父はあまりいい夫ではなく、短気でいつも母に怒鳴っていました。Yさんはお優しい方だと母から聞いています。好意を持つのもわかります。……でも相続対策を苦労して整備してきた手前、それがすべて崩れてしまうことに困惑しているというのが本音です」
相手側の長女も続けます。「仲よくしていただくことには反対どころか感謝しています。このままの状態で特別なお付き合いという形で続けることには賛成です。しかし、本人は結婚という形を望むので、それで困ってしまって……」
相手家族が問題にしているのは、やはり相続についてのようでした。恋愛には賛成、結婚には反対という立場です。
Yさんの資産のポートフォリオは、現金が多くの割合を占め、残りは生命保険と自宅と別荘の不動産のみです。FPが言うとおり、結婚したとしても相続対策を取りやすいかもしれません。
しかし相手側はもっと複雑なポートフォリオなのでしょう。相続人の構成もシンプルではないのかもしれません。Yさんの子ども3人には想像すらできませんが、実務上の大混乱を呼んでいることは確実です。
結婚という形を取らなければ問題にしないというのは、大人の意見だと感心しました。Yさんの子ども三人としては、恋愛にも結婚にも反対なのです。
次女のSさんは正直に言いました。「率直に言うと、私は恋愛にも反対なのです。父親にはオレに指図するなと怒られていますが……どこか子供達を蔑ろにしている気分になるのです」
相手側の長女もその感情には理解を示してくれました。「わかります、突然、男と女を持ち出されても困りますよね。母親でいてくれないのかと私も傷つきました」