老人ホームの入居費用はピンキリ。年金と貯蓄から、身の丈に合ったコスト感の施設を選ぶことがポイントです。しかし「読みが外れた」ということは、よくあるようで……みていきましょう。
老人ホーム入居10年の90代母「老後資金2,000万円」は底をつき…60代娘、唖然「私だって、お金はありません」 (※写真はイメージです/PIXTA)

健康と介護への不安を解消する「老人ホームへの入居」…それから10年後の大問題

老人ホームへの入居を検討する際、問題になるのが、前述調査にもあるように、その費用。通常、初期費用となる入居一時金と、月額費用がかかります。入居一時金はゼロ円~数億円とピンキリで、月額費用も15万~30万円程度と幅があります。初期費用は貯蓄から払い、月額費用は「年金+貯蓄の取崩し」で対応、というのが一般的です。

 

「10年以上の前の話」と前置きをして、現在90代の母が老人ホームに入居した際のことを呟く60代の女性。父(夫)を亡くして以来、母(妻)は一人暮らしを続けていたといいますが、ある日、「施設に入ることにした」と突然の電話。「友人と施設に見学にいったら、気に入った」という理由だったといいます。「高齢の1人暮らし。不安もあったのだろう」と理解を示したあと、どのような施設か調べると、驚いたのは高額な入居費用。お金をどう工面するのか聞いたところ、

 

――年金と貯蓄と……2,000万円くらいの余裕はあるから大丈夫

 

という返事。これが10年前のことで、現在「老人ホームの月額費用をいかに工面するか」と大問題になっているといいます。

 

――お金がなくなると連絡があったのが、先日のこと。私だって、お金なんてありません

 

まさか老人ホームへの入居がこんなに長くなるとは考えていなかったのでしょう。しかし、2,000万円もの貯蓄が底をつくとは……本当にそれだけ貯蓄があったことも疑わしいと女性。母の言葉に、ただ呆れるしかなかったといいます。

 

女性はもうすぐ70代。自身も年金生活で余裕があるわけではありません。とても援助は難しく、入居費用の安い施設に移ってもらうか、女性の家で同居するかの二択しかないといいます。

 

「老人ホーム選び」のポイント…貯蓄をあてにし過ぎてはいけない

老人ホームの入居を検討する場合、まずポイントになるのが自身の年金。元会社員の男性であれば平均年金は月17万円ほど。会社員だった夫を亡くした妻であれば、遺族年金含めて平均月14万円程度となります。あとはどれほど貯蓄があるかで、月額費用を払い続けられる施設を絞り込んでいきます。

 

ただ問題は「入居期間」がどれほどになるか不透明であること。貯蓄をあてにし過ぎると、想定以上に長生きした場合など、貯蓄が底をついてしまい「入居費用が払えない」という事態に陥る危険性が高まります。有り余る貯蓄がない限りは、「年金とわずかな貯蓄の取崩しだけで十分」という施設から検討するのが無難です。

 

[参考資料]

内閣府『高齢者の健康に関する調査』

内閣府『高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』

国土交通省『高齢者の住まいに関する現状と施策の動向』