「棚卸資産」で節税をする限られた方法とは?

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「棚卸資産」で節税をする限られた方法とは?

棚卸資産の評価方法には2種類あり、業種や企業の状況によって選択できることになっています。今回は、こうした棚卸資産の評価による節税方法について見ていきます。

棚卸資産の評価方法を決める基準は2つ

棚卸資産の評価にあたっては、その基準価額を決める方法がいくつかあります。大別すると次のような2つの方法があり、業種や企業の状況によって選択できることになっています。

 

●取得価額をベースにした「原価法」

1つ目は取得価額をベースに評価する「原価法」です。具体的に棚卸資産を種類ごとに区分し、区分ごとに取得価額を計算する方法、その上で、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法といった計算方式で算出します。 
 
数多くのアイテムを扱う百貨店や小売店などの場合、売価還元法が使われることが一般的です。製造業の場合でも原価計算を行わずに、製造工程の段階で製品売価の何%といった方法で計算する売価還元法が採用される場合もあります。

 

●国際会計基準では「低価法」

棚卸資産の取得原価と時価を比較して、どちらか低いほうで評価する方法です。国際会計基準によって欧米企業では低価法を用いているために、国際的にはこの低価法が一般的になっています。 日本でも2008年からは上場企業に対しては低価法が強制的に適用されるようになっていますが、法人税法上は現在も選択制になっており、中小企業のほとんどが原価法を用いて評価を行っているようです。 

評価法はみだりに変えられない

ここで注意したいのは、棚卸資産の評価方法はみだりに変えられないこと。棚卸資産の評価法を変える場合は、新規評価法を採用しようとする事業年度開始の前日までに所轄税務署所長に届け出が必要になっています。原価法から低価法への変更はスムーズにいくかもしれませんが、その逆や新しい評価法に変えてから時間がたっていない場合は却下されることもあります。 
 
さて、そんな棚卸資産の評価で節税は可能なのでしょうか。結論からいえば、次のような限られた方法しかないのが現状です。 
 

●評価損の計上

期末の棚卸資産の中で、一定の条件に合致すれば「評価損」を計上することができます。評価損の計上によって、損金を増やすことができて節税効果が得られます。評価損計上の条件は次の3つです。

 

①災害によって損壊したもの

②商品価値が著しく陳腐化したもの

③品質変化、破損、型崩れなどによって商品価値がなくなり販売不能になったもの 

 
棚卸資産の資産評価では、単なる物価変動などによって、その資産価値が減少しただけでは評価損の計上は認められません。 
 
最終仕入れ単価の引き下げ

中小企業などの場合、特別な届けを出していないときは「最終仕入原価法」という方法で、棚卸資産を評価するのが一般的です。原価法のひとつですが、事業年度の最後に仕入れた商品の「仕入れ単価」によって、その期のすべての商品を評価する方法です。 
 
もともと「売上原価」というのは、その期に仕入れた仕入れ金額の総額(期首棚卸高+当期仕入れ高)から期末の在庫(期末棚卸高)を差し引いた金額ですから、期末の仕入れ価額を何らかの形で低く抑えれば、在庫が小さくなって売上原価を大きくすることができます。売上原価を大きくできれば、その分経費が増えて、収益(利益)を減らすことができるわけです。

 

 

本連載は、2012年12月19日刊行の書籍『スゴい「節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

スゴい「節税」

スゴい「節税」

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

増税、デフレ、円高不況…。中小企業が日本の厳しい経済環境を乗り切るには、いかに売上を伸ばすかということ以上に、今ある利益をいかに残すかに注目することが必要でした。その解決策は節税にアリ。「日々の交際費でコツコツ…

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