廃棄処分の莫大なコストをどうするか
千葉県に工場を持つ食品製造会社のI社長は、今期やや利益が出たので、それを有効利用しようと考えています。そこで役員会議で、使わなくなってしまった機械をスクラップにして工場のスペースを有効利用しようと提案しました。
「しかし、社長。それをやると廃棄処分だけでもけっこうお金がかかりますよ」というのは、経理担当のY部長です。
「損金として計上できますが、それもスクラップ代に見合うかどうか・・・。とりあえず、機械はそのままにして税金だけ処理すれば、今期の利益は圧縮できます」とY部長。
企業も長い間、運営していると、「固定資産」の中には、使用不能になったり、時代遅れで実質的に稼動しなくなった設備などが出てきます。こうした固定資産を決算で損金計上してしまう節税方法があります。
通常は、実際に不要になった固定資産を廃棄処分した上で、その資産の価額を「除却損」として損失計上することになりますが、工場の大型機械などは廃棄処分するだけで莫大なコストがかかってしまうケースがあります。
決算日の後でも損金算入できる「有姿除却」
そこで行われるのが、「有姿除却」という方法です。文字通り、姿があるまま償却するために、有姿除却と呼ばれますが、会社から資金が流出することもなく、さらには決算日の後でも損金として計上できるので、決算で利益が多く出すぎているようなときには、会社中を探して有姿除却できるものがないか、探してみるといいかもしれません。
ただし、有姿除却が認められるためには、いくつか税法上の条件があります。
●今後、事業に使う可能性のないもの
●今後、スクラップや廃棄を前提として放置されているもの
たとえば鉄くずなどのスクラップを決算で処理するためには、スクラップの価値を決めておく必要があります。このスクラップの価値は「貯蔵品」として会計処理されます。たとえば帳簿価額が1000万円の備品は、鉄くずの価格が50万円とすれば、貯蔵品として50万円を計上して、「固定資産除却損」として950万円(備品の固定資産額-貯蔵品)を計上することになります。