家庭を持つ人に比べ、お金や時間を自由に使える傾向が強い単身世帯。のびのびとした暮らしぶりから「独身貴族」などと呼ばれることもありますが、実は単身者の大半が「老後の不安」を抱いています。貯蓄額や年金・保険など、不安の背景はさまざまですが、併せて考えなければならないのが、「老後の住まい」について。詳しくみていきましょう。
貯蓄450万円で「老後が不安」…賃貸暮らしの“おひとり様”を待ち受ける〈さらなる悲劇〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

単身世帯のほうが「負債」を抱えている割合は少ないが…

同じ調査で「借入金」についてみてみると、「借入金がある」世帯の割合は二人以上世帯が20.4%であるのに対し、単身者では15.3%。ここからも、単身者のほうが負債がない分、のびのびと暮らしているような印象を受けます。

 

ただ、「借入の目的」を世帯種別にみてみると、単身世帯では「日常の生活費」が44.8%で最多であったのに対し、二人以上世帯では47.8%が「住宅の取得または増改築などの資金」を挙げ、最多となっています。

 

負債の有無に関する差異の背景には、「住居」が密接に関係しているのかもしれません。実際、持ち家率についてみてみると二人以上世帯が68.1%に上るのに対し、単身者では33.0%。年齢を重ねるほど相続等で家を取得するケースが増えて差異は縮まりますが、30~50代の単身者は明らかに「賃貸派」が多い傾向があります。

 

年代別「持ち家率」の推移

20代:4.9%/17.5%
30代:11.4%/47.2%
40代:18.2%/61.8%
50代:33.6%/71.9%
60代:54.9%/79.3%
70代:68.1%/80.8%

出所:金融広報中央委員会『令和4年 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査、二人以上世帯調査]』
※数値左:単身世帯、右:二人以上世帯

 

そんな賃貸派の単身者、20代の67.9%、30代の69.1%、40代の63.0%、50代の49.5%が「民間の賃貸マンション・アパート、借家」に暮らしていますが、心配なのが年齢を重ねたとき。高齢になるほど賃貸契約時の審査が厳しくなるということを、十分に想定しておく必要があります。

 

今後、さらなる高齢化の進行によって諸々の制度が見直される可能性はありますが、少なくとも現時点では、賃貸物件オーナーの約25%が「居室内での死亡事故等に対する不安」「賃料の支払いに対する不安」から、高齢者の入居に対する拒否感を抱いています(公益財団法人日本賃貸住宅管理協会『日管協短観』より)。

 

最近では、安定収入としての「年金」を受け取っている高齢者のほうがかえって家賃滞納リスクが少ないからと、喜んで受け入れる賃貸オーナーも増えているようですが、2040年代中ごろには年金額が2割も目減りするという観測もあり、これが現実になれば上の受け入れ理由は成立しなくなります。家賃の滞納が続けば、入居者はいずれ「強制退去」を宣告されるでしょう。その後、家賃の安い部屋に引っ越そうにも審査をパスできず「住むところがない」という悲劇に見舞われる可能性は十分に考えられます。

 

冒頭にみた通り、「生涯未婚」を決意する人は増加傾向にあるため、今後単身高齢者も増加することでしょう。単身者の多くが、「老後のお金」についての不安を抱えていることは前述しましたが、持ち家率が低い単身者の場合はとくに、仮にある程度の貯蓄があったとしても、早くから「住まい」の問題について備えておく必要がありそうです。