苦境の物流業界…2024年問題で「運転手の給与減」&「サービス低下懸念」
日本郵政グループが中間決算で純利益4割減。ヤマトホールディングスや佐川急便も業績を下方修正……燃料や人件費の高騰などにより、事業環境の厳しさが増す郵便・物流業界。さらに頭を抱えているのが、2024年問題です。自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称ですが、まず1日に運べる荷物量が減るため、運送・物流業者の売上、利益がさらに減少するといわれています。また中小企業では月60時間の残業が発生した場合には、2023年の法施行により割増賃金率が25%から50%へ引き上げられ、さらに人件費が増加。利益減少に繋がるとしています。
ドライバーにおいては残業時間が減少するとともに収入も減少するといわれています。たいていのトラックドライバーは、走行距離に応じて運行手当が支給されます。走れば走るほど収入が増える歩合制なのですが、労働時間の規制により走れる距離が短くなれば当然、収入は減少。そうなると離職者が増え、労働力不足が加速するといわれています。
公益財団法人全日本トラック協会『日本のトラック輸送産業-現状と課題-2023』によると、トラックドライバーの年間所得額は大型トラック運転手で477万円、中小型トラック運転手で438万円。月換算でそれぞれ39万円、36万円、手取りにすると30万円、28万円といったところ。全産業平均よりも大型トラック運転手で4%、中型トラック運転手で12%ほど低くなっています。
また年間労働時間をみていくと、大型トラック運転手で2,568時間、中小型トラック運転手で2,520時間それに対して、全産業の平均は2,124時間。大型トラック運転手で月37時間、中型トラック運転手で月33時間長くなっています。
確かに、長時間労働のトラック運転手。働き方改革が叫ばれているなか、改善の方向にあるのは当然のことです。一方で、全産業平均値よりも低い給与。前述の通り、トラック運転手は走れば走るだけ儲かる歩合制を取り入れているケースがほとんどなので、労働時間の調整が入れば、給与水準はさらに低下。それにより離職者が増加すると、「荷物を運ぶ人が足りない」→「現在展開している当日配送、翌日配送というようなサービスがなくなる」と私たちの生活にも大きな影響を与えるとされています。