介護費用、9割が「自分で何とかする」と言うものの…
父親の老人ホームについては、年金と貯蓄で賄える施設を父親が自ら探してきたといいます。「お金のことで、子どもに面倒をかけたくない」という思いもあったのでしょう。
内閣府『令和3年 高齢化社会白書』によると、介護が必要になった場合の介護費用について、「年金等の収入で賄う」が最も多く63.7%。続いて「貯蓄で賄う」が20.5%、「収入が貯蓄では賄えないが、資産を売却するなどして自分で賄う」が4.0%。「子などの家族・親戚からの経済的な援助を受けることになると思う」が3.2%、9割近くが「自身で何とかする」と回答し、子どもなど家族が頼りという人はわずか3%程度です。
ただ必ずしも思い通りにいくとは限りません。
厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金受取額は14万円。65歳以上男性に限ると月17万円、女性で月11万円です。手取りにすると14万~15万円程度でしょうか。男性の父親の老人ホームの場合、月額請求額は15万円程度。月額費用外のサービスの利用状況によって多少上下するでしょうが、年金と少しのプラスαだけで老人ホームの利用料金は払えるはずでした。
しかし毎月プラス5万円となると、話はだいぶ違ってきます。仮に月5万円の持ち出しだとすると、1年で60万円、5年で300万円、10年で600万円……長生きすればするだけ、当然、手出しは増えていきます。
ーー父には長生きしてほしい、でも費用には限りがある
ーー貯蓄も尽きたら……お金って、誰が払うんでしょうか?
そう呟きつつも「長男である自分が払うしかないだろうな」と諦めているといいます。
老人ホームの入居期間は平均4.5年。しかし、これはあくまでも平均値で、入居期間が10年以上に及ぶことも珍しくはありません。また今後も物価高が続けば、老人ホーム利用料のさらなる引き上げもあるでしょう。さらに昨今は介護職員の賃上げの動きも加速しており、人件費の増加分が利用料に反映される可能性もあります。老人ホームへの入居の際には、このような背景も加味してシミュレーションを行わないと、家族に負担をかけることになるかもしれません。