高齢者でも「収入が足りずに生活苦」だけでは「生活保護」は受けられない
年金が少なくても、貯蓄が十分にあれば生きていけますが、貯蓄もない……となると、高齢者の生活はかなり厳しいものになります。
たとえば東京23区に住む、70代男性の生活保護費を考えてみましょう。生活費の最低額となる生活扶助基準額は7万4,220円、家賃としての住宅扶助基準額は5万3,700円、合わせた12万7,920円が生活保護費。東京では、持ち家でなければ月8万円生活は難しいでしょう。
では生活費が足りないなら生活保護を申請して……とはいかないのが現実。
ーーまだお元気みたいなので、働いてください
基本的に生活保護は就労できるなら働き、そのうえで収入が生活保護費を下回る場合に支給されます。70歳であっても収入が少ないという理由だけでは、生活保護費はなかなか支給されません。なんとも厳しい現実ではありますが、元をたどれば生活保護費はわたしたちの税金。仕方がありません。
「生活が苦しいなら、まずは働きなさい」と諭されるお1人さま高齢者。では働かなくてもいいだけの余裕があれば幸せかといえば、例外もあります。
高齢者の「孤独・孤独感」について尋ねている、内閣府『高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』。「自分には人との付き合いがないと感じることがあるか」の問いに対して「ある*1」が40.0%、「自分は取り残されていると感じたことがあるか」に対しては「ある*1」が22.4%、「自分は他の人たちから孤立していると感じることはあるか」に対しては「ある*1」が21.2%でした。
*1「時々ある」と「常にある」の合計
仕事を辞めると、社会との関わりをなくし、孤独を深めていく……そういうお1人さま高齢者は増加傾向にあります。そしてその先にある最悪の結末が、昨今、問題視されている「孤独死」です。
東京都の資料*2によると、2019年、孤独死は5,554人。そのうち高齢女性が1,379人、高齢男性が2,534人。孤独死の7割が高齢者によるものです。
*2「東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計」より。異常死のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの人=孤独死と定義している
一般社団法人日本少額短期保険協会の調査によると、孤独死が起こってから発見されるまでの平均日数は18日ほどだといいます。亡くなってから2週間以上、ただ発見されるのを待っているわけです。
そんな悲劇を少しでも減らすために社会ができることとして「おせっかい」をあげる専門家も。適度に人に干渉し、おせっかいをすることで孤立する高齢者は減らすことができるといいます。まずはご近所同士、顔を合わせたら挨拶をする、そんな当たり前のことから始めてみてはどうでしょうか。