高齢になった親と離れて暮らす場合、何かと心配は尽きません。安心できる暮らしのために「老人ホームへの入居」も選択肢になりますが、ここでの悩みどころは「親の慣れ親しんだ街の老人ホーム」か「子どもが通いやすい街の老人ホーム」という二択。果たして、どちらが正解なのでしょうか?
認知症の80代母〈東京の老人ホーム〉に預けたが「こんな所に閉じ込めないで!」と慟哭…娘「とんでもない親不孝をしてしまった」 (※写真はイメージです/PIXTA)

遠方に住む親を呼び寄せて…子どもが住む街の「老人ホーム」に入居

遠距離に住む、1人暮らしの母親が心配……解決の方法として考えられるのが、母親を呼び寄せて、子どもの住まいの近くにある老人ホームへの入居。実際、老人ホームの入居を検討する際、「子どもや親戚の通いやすさ」は重要なポイントです。子どもや親戚の住まいから遠い施設を選んだ結果、誰も面会に来ることがなく寂しい思いをする……そんなケースも珍しくありません。

 

80代の母親が軽い認知症と診断されたのを機に東京に呼び寄せて、自宅から20分ほどの老人ホームに入居してもらったという60代女性。「母が実家で暮らしているときは、常に心配が付きまとっていたが、もう心配はない」と綴ります。

 

しかし、話には続きがあります。女性は頻繁に施設に通うようにしていましたが、そのたびに「こんな所に閉じ込めないで!」「田舎に帰りたい!」と泣き叫んでいる母親を目にしたのだとか。「親孝行だと思っていたのに……わたし、とんでもない親不孝をしてしまった」と、後悔の念を綴っています。

 

国土交通省『住生活に関する意識調査』によると、介護が必要になったときに過ごしたい場所を尋ねたところ、70代以上女性で最も多かったのが「その時に住んでいる家」で67%。「老人ホーム」は33%でした。施設への入居を希望する人は多いものの、「住み慣れた場所」を希望する人が圧倒的。また施設に入居するにしても、まったく知らない地域の施設となると、話は別かもしれません。そう考えると「田舎に帰りたい」という母親の気持ち、またその気持ちを汲み取れなかったと後悔する子どもの気持ち、どちらも痛いほど分かります。

 

しかし、話にはさらに続きがあります。ある日、女性に話しかけてきた介護職員から「お母さん、いつも楽しそうですね」と、耳を疑うような言葉をかけられたのだとか。「えっ、いつも田舎に帰りたいって、泣き叫んで……」と聞き返すと、女性が帰るとすぐにケロッとして楽しそうにしているといいます。「きっと、娘さんに甘えているんですよ」と介護職員。しばらくすると「田舎に帰りたい!」と泣き叫ぶことも減っていったといいます。

 

お互いの住まいが遠距離にある親と子。親の老人ホームへの入居においては、「親の住み慣れた街の施設」か、「子どもの住まいから近い施設」の二択になるでしょう。前者は「親の負担は小さいが、面会には行きづらい」、後者は「親の負担は大きいが、頻繁に面会に行ける」と、どちらも一長一短。親子がじっくりと話し合って、各々が正解を出すしかないようです。