高齢者の再婚による相続問題
入籍して正式な配偶者になってしまえば、婚姻期間には関係なく相続権が発生し、法定相続分として遺産の1/2は再婚相手が相続する権利を持ちます。つまり、なにもしなければ、結婚後ただちにBさんはAさんの財産の半分を相続する権利が発生するのです。
高齢者の再婚では、死亡後に残された子供や再婚相手のために、相続財産については家族で話し合って「遺言書」に残しておくことが重要です。遺言書に財産の配分を明記すれば、法定相続分よりも優先されますので、残された家族同士でもめることもありません。
ですが、遺言書が万能というわけでもありません。法律には、遺言でも侵害することができない「遺留分」と呼ばれる最低限の権利があり、これにより妻には法定相続分の1/2が保障されているのです。もし、この遺留分を下回る相続分を指定した遺言を作成した場合、「遺留分を侵害された」と遺留分減殺請求(遺産の取り戻し請求)される恐れがあります。
つまり、「全財産を子供たちに渡す」と遺言書を書いても、再婚相手には、遺産×1/2×1/2=残された財産の1/4は権利がありますので、再婚相手にこの分が渡ってしまう可能性があるのです。そうなると、揉めないように遺言書を作成したつもりでも、結局は子供と再婚相手のあいだで揉めてしまう結果になってしまいます。
こうした場合は、事前に再婚相手に「遺留分放棄」をしてもらい、裁判所の許可が下りれば、遺言書のとおりに全財産を子供たちに残すことが可能となります。そのためにも生前に家族同士で話し合っておく必要があります。なお、遺言書作成や遺留分の放棄については、弁護士等の専門家に相談してください。
生命保険を利用した相続対策
遺留分放棄をスムーズに進めるために生命保険を活用する方法があります。たとえば、Bさんが亡夫から十分な遺産や遺族年金を受け取っていて遺留分放棄を納得したとしてもAさんは「いくらかでも残してあげたい」と思うかもしれません。そういった場合は、結婚後に一時払いの終身保険などに加入することで、再婚相手にお金を残してあげることができます。
※生命保険は相続財産ではなく、受取人固有の財産となりますので、相続放棄や遺留分放棄をしても受け取ることができます。