再婚相手の扶養義務
さて、Bさんのように再婚相手に身寄りがない場合もあります。その場合、Aさんが先に亡くなってしまったら、Aさんの子供たちはBさんの面倒をみる必要があるのでしょうか。
法律上の「扶養義務」とは、基本的に血のつながりがある者同士(直系血族や兄弟姉妹)が負うべきもので、子供は親の再婚相手と養子縁組をしない限り、扶養義務はありません。ですから、Aさんの息子さん達はBさんの面倒をみる必要はありません。
意外と多いお墓の問題
Aさんのように、すでに家のお墓に先妻が入っていることで再婚相手とお墓の問題が浮上することは多いものです。これも生前に話し合っておく必要がある内容です。
もし、「先妻と同じお墓には入れない」となれば、再婚相手には自分の実家のお墓に入ってもらうか、結婚後に夫婦や再婚相手個人で新しいお墓を用意する必要も出てきます。
猶予期間を与えて結婚を認める気持ちが高ぶってしまって、どうしても結婚したいと考える高齢者もいるでしょうが、入籍してしまったあとに「やっぱり合わない」となるとまた面倒ですし、老人ホームにも迷惑をかけることになります。
相続財産などの話し合いが終わってもすぐに入籍させてしまうのではなく、「桜のきれいな来年の春ごろに入籍したら?」などと、婚約期間を設けて入籍を先に延ばして様子を見る時間を取るようにしましょう。
Aさんたちの行く末は?
さて、AさんとBさんはAさんの息子さん達と次のような約束をしてとうとう結婚することになりました。
・Bさんは遺留分放棄すること。
・Aさんが亡くなったあとにBさんはAさんの息子さんたちには一切頼らないこと。
・BさんはAさんの元妻が入っているお墓には入らないこと。
AさんとBさんはこういったことをまとめた念書を作成し、約束を守ることにしました。
その後、AさんとBさんは仲良く過ごしていましたが、Aさんには新たな悩みが出てきました。それは、息子達家族が寄り付かなくなったことです。以前は、度々、それぞれの息子さん達が孫を連れて遊びに来てくれたのですが、Bさんとの仲を打ち明けてからはさっぱり来てくれなくなりました。息子達は話し合いや書類の作成など必要な時には来るのですが、あくまで事務的です。
一度「孫の顔を見たいな」と言ってみましたが、「そうだね」と言うだけで実際に連れてくるそぶりはありません。孫たちも高校生や大学生なので、可愛い、という年頃は過ぎましたが、それでも顔を見せてくれなくなると寂しいものです。
「息子達は75歳で再婚した私のことを孫たちになんて言っているのだろうか?」
いままで感じたことのない寂しさを胸に思いにふけるAさんでした。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表