生活に困窮したときの救済措置である「生活保護制度」。しかし、一度生活保護を受給した人は、そこから抜け出すのが困難になってしまうケースが少なくないと、FP1級の川淵ゆかり氏はいいます。いったいなぜでしょうか。本記事ではAさんの事例とともに、生活保護の実態について解説します。
生活保護のままでいたい…「月22万円」の受給に頼る28歳・シングルマザーが働かないワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

シングルマザーが受け取れる生活保護の額

たとえば、シングルマザーについて、受け取れる生活保護費の額はお住いの級地区分の別により、次のようになります。

 

(例)母親(20~40歳)と子供2人(0~2歳)(3~5歳)の場合

 

[図表3]級地区分別のシングルマザーが受け取れる生活保護費支給額 

 

児童養育加算はお子さんが18歳になる年度の3月末日(高校卒業の年)まで、義務教育の間は教育扶助が加算されます。なお、生活保護を受けている母子家庭でも、児童扶養手当は受け取ることができますが、生活保護費の額からは控除されます。

生活保護を受給しているシングルマザーAさんの悩み

Aさんは地方に住む28歳のシングルマザーです。実家の両親も生活は決して楽ではなく、頼る人がいないため、1歳半と4歳の2人の子供を抱え、児童扶養手当と生活保護で合わせて約22万円を受給して生活をしています。お子さんが2人とも小さいので、現在は働きに出ず、生活保護に頼って生活していますが、制限が多く、早く働きに出て生活を立て直したいと考えています。

 

生活保護を受けることによる制限

・所有できるものに制限がある(預貯金もできず、生命保険に加入もできない)

・住む場所に制限がある(家賃補助の金額に収まる住まいに住むこと)

・自由にお金を使えない(趣味や娯楽にまとまったお金が使えない)

・ローンやクレジットカードの審査に通らない

 

さらに、上記に加えてケースワーカーとの定期面談が必要です。生活保護を受給すると担当のケースワーカーが受給者の自宅に年に2回以上の家庭訪問をすることが義務付けられています。生活保護法では、訪問の際の事前連絡は義務付けられていないため、ある日突然ケースワーカーがやって来ることもあります。

 

Aさんは、子供が大きくなったらもう少し広い部屋に住みたいと考えていますが、家賃に制限があり、引っ越しも簡単ではありません。また、テーマパークや旅行に連れていくのも難しく、子どもに我慢をさせる生活が続くのかと考えると胸が痛みます。