生活に困窮したときの救済措置である「生活保護制度」。しかし、一度生活保護を受給した人は、そこから抜け出すのが困難になってしまうケースが少なくないと、FP1級の川淵ゆかり氏はいいます。いったいなぜでしょうか。本記事ではAさんの事例とともに、生活保護の実態について解説します。
生活保護のままでいたい…「月22万円」の受給に頼る28歳・シングルマザーが働かないワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

就職のためのスキルアップで受け取れる「生業扶助」

なお、就職のために必要な資格取得には生業扶助を受給することができます。ですが、どんな資格でもいいのではなく、就職するうえで必ずその資格が必要な場合に限られます(介護士、美容師、フォークリフトなど)。

 

さらに、合格できなかったり就職できなかったりした場合は受給できたとしても返還しないといけません。金額は、生業扶助の「技能修得費」として、学習のための実費(上限額8万3,000円以内)が支給されます。

 

ほかにも「生業費」(小規模の事業を営むための資金または生業を行うための器具、資料代の経費を補填するものとして支給)として、実費(上限額4万7,000円以内)が、就職が確定した人に対し、「就労支度費」(就職のために直接必要となる洋服代、履物等の購入経費、就職の確定した者が初任給が支給されるまでの通勤費を補填するものとして、必要な場合に支給)として、3万2,000円以内が支給されます。

 

就職して子供たちに楽をさせたいが…Aさんが抱えるジレンマ

Aさんは、子供の教育のためにも親として働く姿を見せないといけないと思うのですが、2人の子供を育てていけるような収入を得られる仕事はなかなかありません。また、仕事があったとしても体力的に自信がないため、育児をしながら働くのもかなりキツいと考えてしまいます。

 

そうであれば、「厳しい制限があっても働かないで生活保護を受給し続けたい。そのほうがずっと楽ではないか」とも考えてしまいます。自分が母親としてどうすべきか。貯蓄もできず、これから先の生活に不安しか感じません。「生活保護から抜け出すのは難しい」といわれますが、「こういうことか」と実感する日々を送っています。

生活保護の将来

人口減少や高齢者率の増加により、日本の社会保障制度の維持は難しくなっていきます。公的年金や医療・介護制度が不安視されていますが、生活保護も同様で、いつ大きな見直しが入ってもおかしくありません。男性よりも女性のほうが長生きですし、女性の生き方も多様化し、結婚後も働く人が増えました。今後は、若いうちから女性自身も生涯の働き方計画(ジョブプラン)について考えていく必要があります。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表