人生100年時代。60歳で定年を迎えても、残りの人生40年と考えると、現役引退はまだ早すぎると、60歳以降も働き続ける人が増えています。とはいえ、年金を手にできる年齢になれば徐々に働く人は減っていきます。しかし70歳を超えてもなお働き続ける、切実な事情を抱えた人たちも。みていきましょう。
平均年金14万円だが…〈時給1,061円〉レジ打ちの70歳女性、年齢上限で退職も「もう少し働かせて」の悲痛 (※写真はイメージです/PIXTA)

働かないと生活が成り立たない…切羽詰まった日本の高齢者

日本労働組合総連合会『高齢者雇用に関する調査2020』によると、「60歳以降も働きたいと思う理由」として、77.0%「生活の糧を得るため」がトップ。46.2%「健康を維持するため」、33.9%「生活の質を高めるため」、28.8%「働くことに生きがいを感じているため」、24.9%「仕事を辞めてもやることがないから」と続きます。

 

人によってどれほど切実な状況かは異なるでしょうが、働かないと生活がままならない高齢者が、この日本には驚くほど多くいます。

 

厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金受取額は、併給の国民年金と合わせて月14万円程度。65歳以上男性に限ると月17万円、女性で11万円ほどです。

 

一方で最低限度の生活費の目安となる生活保護費は、東京都23区、70歳以上1人暮らしで、生活扶助額が7万4,220円、住宅扶助額が5万3,700円で、合計12万7,920円。平均的な年金暮らしだと、最低限度の生活費、ギリギリといったところ。貯蓄がない、心許ない、といった場合は、働かないと不測の事態に備えるのは難しいでしょう。

 

金融広報中央委員会『令和4年家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]』によると、「(将来を見据えた)貯蓄がない」と回答した70代はおよそ3割。また全年代対象の集計結果ではありますが、「日常的な出し入れ・引き落としに備えるための預貯金もない」、つまりその日暮らしだという単身者は4.9%。高齢単身者は700万人といわれているので、そのままの数値を当てはめれば、35万人ほどの高齢者が明日も見えない生活をしていることになります。

 

暮らしていくために、働かないと……限られた選択肢のなかで必死で生きる高齢者たちの悲痛が聞こえてきます。