宝くじで1億円当たったら……誰もが一度は夢見るもの。では、実際に高額当選者となった人のその後はというと、あまり知られていません。普通のサラリーマンであるAさんは、1億円を当てた高額当選者です。しかし数年後、Aさんは宝くじに当選したことを後悔するほど悲惨な末路を迎えることに……。一体なぜでしょうか。本記事では、宝くじ当選者のその後について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
ずっと隠してきたが…実は宝くじで“1億円”が当たった年収580万円の45歳サラリーマン「今、本当に後悔しています」のワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

とうとう家族にバレてしまったAさん、瞬く間に噂は広まり…

さて、宝くじ当選から半年も過ぎ、Aさんも気持ちがすっかり緩んだころ、「夫はなにか隠している」と以前から感じていた奥さんは、Aさんの出張中に書斎を物色し、そしてとうとうクローゼットの奥から通帳や「その日から読む本」などが入った箱を見つけ出してしまったのです。

 

Aさんは出張から帰ると奥さんと娘さんに猛攻撃に合いました。奥さんは「私が働く意味なんて」と、パートを辞めてしまいます。そしてAさんは2人から5日間の海外旅行を約束させられてしまいました。

 

Aさんの奥さんは、さすがに宝くじに当たったことは伏せましたが、友達やご近所に海外旅行に行くことを喋ってしまいます。Aさんは有給休暇の届け出のほか、会社の決まりから海外旅行の届け出も必要で、「給料も上がっていないのにあいつは景気がいい」と社内で噂されてしまいます。

 

海外での妻や娘の買い物熱はすさまじく、帰国してからもこの熱は冷めません。キッチンのリフォームや高級RV車も買わされ、通帳残高はみるみる減っていき、当初の資金計画などあったものではありません。

 

Aさんは減ってしまった分を取り返そうと慣れないFXに手を出して失敗し、さらに大きな損失を出してしまいます。すっかり贅沢が身に付いてしまった妻と娘。なかなか生活のレベルをもとには戻せませんし、Aさんが注意しても聞こうともしません。

 

海外旅行やキッチンリフォームに高級車、ブランド品を身にまとい派手になっていく妻や娘は近所でも会社でも「Aさんの家は景気がいいな、宝くじでも当たったんじゃないの?」と噂されるようになっていきました。

ついに家族が崩壊…宝くじ当選者の悲しい現実

Aさんの通帳の残高も少なくなり、家族の仲はさらに悪くなっていき、娘さんは20歳を迎えたころに家を出ていってしまいます。

 

宝くじが当たってからは仕事への意欲も失くしていたAさんも50歳を過ぎ、「窓際」と呼ばれる部署に追いやられ、年収は100万円以上もダウンしてしまいます。すっかり夫に愛想をつかしたAさんの奥さんも(彼氏ができたのでしょうか?)、保険を解約してまとまった現金を手に家を出ていってしまいました。

 

それから数年後、Aさんはこの件について一度だけ話してくれました。

 

「宝くじのお金がなくなって妻と娘を失いました。妻も家から持って出たお金がきっと底をついてしまっているんじゃないでしょうか。振り返っても、なぜあんな金遣いをしてしまったんだろう、宝くじなんて当たらなければ、そもそも宝くじなんて買わなければ……どこを切り取っても後悔しかありません。私も50歳を過ぎてこれからどうやって生きていこうか悩んでいますが、いまはただ妻と娘に会いたい」

 

考えてみれば、Aさんは一言も「宝くじに当たった」とは誰にも告白しませんでした。それでも、宝くじに当たったことはバレてしまいましたし、噂も流れてしまいました。近所の目もあったのでしょう。1人で住むには広すぎる家を売却してAさんはひっそりと1人どこかへ引っ越したそうです。

 

宝くじの夢が現実になったとき、夢は消え去ってしまうのでしょうか。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表