将来に向けて給与がアップしていくことを前提に、「負担感のある」ギリギリのローンを組んで夢のマイホームを実現。住宅購入の現場でよくみられる光景ですが、分譲マンションには、ただでさえ住宅ローンの返済に苦しむ家計を追い詰めるさらなる落とし穴があるといいます。詳しくみていきましょう。
月収37万円・30代会社員「なんとか返せるプラン」で新築マンション購入も…〈思わぬコスト増〉に「家計破綻」の危機 (写真はイメージです/PIXTA)

マンション購入者の半数がローン返済に「負担感アリ」…維持管理費の高騰が追い打ち

マンションでも戸建てでも、マイホームはやはり数千万円という大きな買い物ですから、大半の人が住宅ローンを利用します。首都圏のなかでも、とくに土地の限られている東京では、多くの世帯がマンションを選択していますが、新築マンションを購入した世帯の51.2%がローン返済に「負担感がある」と回答しています。

 

建築現場の人手不足や資材の高騰、土地価格の上昇によって新築分譲マンションの価格が高騰していますから、いくら超低金利だったとしても、平均的な稼ぎのサラリーマンが「ムリのないプラン」でマイホームを実現するのは容易ではないようです。

 

さらにマンションの場合、住宅ローンの返済以外にも、管理費や修繕積立金といった購入後のランニングコストを負担しなければならない点にも注意が必要です。東京カンティが2020年に発表した『首都圏 マンションのランニング・コスト最新動向』をみると、首都圏の新築マンションの管理費は2015年以降5年連続で、修繕積立金は2016年以降4年続けて上昇しており、過去10年間では管理費が18.4%、修繕積立金が22.1%も上昇しています。

 

維持管理費の高騰の背景には、タワーマンションをはじめとする高価格帯のマンションの供給が相次ぎ、平均値が引き上げられたことが挙げられますが、マンションの管理・建設業界の人手不足と人件費高騰は続いており、これらのコストは値上がりを続けるものとみられています。

 

国土交通省の調査によると、新築分譲マンションの世帯主の平均年齢は39.9歳(一次取得者)。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」で2022年の東京に住む同年代のサラリーマン(大卒・正社員)の給与事情をみてみると、平均月収は37万8,500円、残業代やボーナスを合わせた推定年収は637万700円ほど。ちなみに10年前、同年代の男性サラリーマンの月収は約37万3,700円、推定年収は623万7,700円ほどであり、マンションの管理費や修繕積立金の上昇幅に比べ、給与の伸びは限定的であることがわかります。

 

国土交通省『平成30年度マンション総合調査』によると、マンション購入者の62.8%が、「永住するつもり」と考えており、その「永住意識」は年々高まっています。しかし、給与は増えず、維持管理費は高騰を続けている……そうした現状を鑑みると、マイホームに住み続けることは意外にも容易ではないのかもしれません。

 

マンションに限らず、戸建住宅であっても屋根や外壁の塗装などの定期的なメンテナンスには大きなコストがかかります。「夢のマイホーム」に舞い上がっている購入者の多くは維持管理にかかるコストを見落しがちですが、直近値上がりの著しい食品や光熱費と同様、マンションの管理費・修繕積立金も値上がりすることも念頭に置いたプランを組むことが重要といえそうです。

 

将来に向けて給与が着実にアップしていくことを前提に、「いずれ楽になるはず」と上限ギリギリのローンを組む人も大勢います。しかし年齢を重ねれば給与が増えるという保証はどこにもない以上、借入時点の収入を基準として返済プランを組むことが、30年超に及ぶこともある住宅ローンを滞りなく返済していくための最善策といえるでしょう。