新卒から定年退職まで勤め上げたサラリーマンは、大企業なら2,000万円、中小企業なら1,000万円ほどの退職金を受け取れるとされています。大半はこの一時金を「預貯金」にまわすようですが、超低金利のいま、退職金を元手に運用デビューを果たすという人も少なくないようです。今回は、退職金を受け取ったタイミングで金融機関が案内してくることが多い、「退職金の受給者限定」の商品についてみていきます。
銀行推奨の“限定商品”に〈退職金1,000万円〉を投じた60歳・元サラリーマン…「預貯金のまま置いておけばよかった」と後悔のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

企業によっては2,000万円超…退職金の使い道は?

企業に所属するサラリーマンの多くが、60歳で定年を迎えます。最近では、60歳以降も働ける制度を整備している企業も増えているといいますが、多くの場合、雇用形態は嘱託社員や契約社員となり、現役時代に比べて収入は大きくダウンするようです。

 

そんなサラリーマンの現役引退後の生活を支えるのが、「年金」と「退職金」。

 

現役時代、ともに平均的な給与を受け取っていた共働き夫婦の場合、厚生年金部分の受取額は夫が約10万3,000円、妻が約7万4,000円。国民年金を満額受給できるとすると、夫婦で月31万円ほどの年金を手にすることになりますが、これはあくまでも現在の年金受給者の話。2040年半ばころには年金が2割目減りするとする政府の試算もありますから、退職金のような一時金に大きな期待をかけている人も少なくないはずです。

 

退職金は大きく、従業員の退職時に一括で退職金を支給する「①退職一時金制度」、従業員の退職後、一定期間に渡って退職金を支給する「②確定給付企業年金制度」、従業員が、企業が積み立てた掛金を年金資金として運用する「③企業型確定拠出年金制度」、積み立てた退職金が、従業員の退職後に共済機構から支払われる「④中小企業退職金共済」の4つに分けられますが、退職金と聞いて多くの人がイメージするのは①の「一時金」ではないでしょうか。

 

退職金の金額について、一般社団法人日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』によると、大学卒・総合職・60歳定年の場合で2,440.1万円。高卒・総合職・60歳定年で2,120.9万円。大企業なら2,000万円強というのが1つの目安です。一方、中小企業の場合は大卒の定年退職で1,091.8万円と、大企業の半分程度になりそうです(東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』より)。

 

波乱万丈の会社員人生を終えたばかりの人が1,000万~2,000万円もの一時金を受け取ったとしたら「自分へのご褒美」にと、少しくらい贅沢をしても罰は当たらないように思えますが、実際のところ退職金受給者はそのお金をどんな風に使っているのでしょうか。

 

一般社団法人 投資信託協会の『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2021年(令和3年))』で、退職金の使い道をみてみると、「預貯金」が59.3%で最多。ほか上位には「日常生活費への充当」(25.6%)や「住宅ローンの返済」(20.8%)などが並び、多くの人が堅実な使い方を志向していることがわかります。

 

そのほか、退職金の使い道として「資産運用のための金融商品の購入」が目立ちます。

 

「年金だけでは老後資金が不足する」と叫ばれていることもあって運用に関心を持つ人は多いようで、また「初めて投資した年齢」として「60代」を挙げる人が17.8%に上っていることから、退職金というまとまった一時金を元手に投資を始める人が多い様子がみて取れます。