年金の受け取りを65歳より遅らせることで、受取額を増やすことができる「年金の繰り下げ受給」。しかし、実際に制度を活用している人は50人に1人だとか。一見、お得に見える制度のネガティブな一面をみていきます。
「年金、2倍になりますよ」につられて…65歳で年金17万円だった男性、75歳で手にする「衝撃の受取額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

月17万円→月31万円…年金が増額で税金はどうなる?

65歳で月17万円の年金を受け取る場合、額面は年2,040,000万円。65~75歳未満、制度加入前の健康保険が社会保険だとすると、年間保険料は7万7,600円。また所得税は1万9,000円、住民税は4万8,000円、手取り収入は190万円ほどとなり、年間15万円ほど、税金やら保険料やらで引かれることになります。

 

では75歳で月31万2,800円を受け取る場合をみていきましょう。額面は年375万3,600円。75歳以上となり、年間保険料は1万3,200円ほどです。そして所得税は10万7,500円、住民税は21万5,000円、手取り収入は342万1,100円と、30万円近くも引かれることになります。

 

あくまで単純計算なので誤差はあるものの、65歳で受け取る年金額が多いほど、繰り下げによる増額幅は大きくなり、その分、税金等で引かれる額も増える可能性が高くなります。実際の受取額をみて「なんで、こんなに引かれているんだ!」と衝撃を受けることになるのです。一方、そもそも年金額が少ない場合は、繰り下げても税金は変わらず、増額分まるまる手にできるケースも。

 

ただ繰り下げ受給に対して、得と考えるか、損と考えるかは人それぞれ。老後の生活の中で、年金がどのような役割を果たすのか、ライフスタイルや保有資産などによって異なるので、万人に「このタイミングで年金を受け取るのが良い」とはいえません。自身が「もらい時」と考えるタイミングがベストだと考えて、65歳でもらうのか、繰り下げるのかを考えましょう。