毎年「ねんきん定期便」を細かくチェックしていたのに…
色々と計算してきましたが、就職してからどれくらいの給与を手にしてきたのか、細かくさかのぼるのは大変なこと。実際に将来の年金額を計算してみることは難しいでしょう。
しかし、老後の生活をきちんとシミュレーションして備えるためには、ある程度、正確な年金額は把握しておきたい……そこで利用したいのが「ねんきん定期便」です。毎年、誕生月に送られてくるもので、50歳未満であればそれまでの保険の加入実績に基づいた将来の年金額、50歳以上はこの調子で給与を手にしていくことを仮定した場合の将来の年金額が記されています。
定年を控えた50代の大卒サラリーマン。子どもの教育費も目途が付き、住宅ローンも先が見えてきた……そろそろ老後を見据えた資産形成を加速させたい! そう考えるなら、たとえば
①まずは「ねんきん定期便」で将来の年金額をチェック
②現在の家計の支出をチェック
③年金生活になってから、どれほどダウンサイズできるか検討
④足りない費用=貯蓄でカバーすると仮定し、資産形成を進める
とプランニングしていきます。年金受給に近づくにつれ、将来の年金額は確実なものになっていくので、それを元に、毎年1回は資産形成の進み具合をチェックするといいでしょう。
綿密なプランニングのもと、初めての年金支給日。通常、年金は偶数月の15日に2ヵ月分振り込まれます。初めて手にする年金……初任給を手にした時のようなワクワク感があります。しかし実際の振込額をみて、「んっ⁉」と感じる人も多いようです。
ーーなんか、年金が少ないぞ
65歳まで頑張って働いたから、年金は月19万円になるはず……しかし、振り込まれたのは16万円強。思わず「嘘だろ⁉」と疑ってしまうでしょう。しかし、至極当たり前のことが抜け落ちていました。
年金収入は原則、雑所得。課税対象です。「ねんきん定期便」に記されている年金額はあくまでも額面であり、手取り額ではないのです。年金から天引きされるのは「所得税」「住民税」「介護保険料」「国民健康保険料、または後期高齢者医療保険料」の4点。
所得税は、所得控除額(120万円+各種控除額)を引いた所得金額に課税されます。「住民税」は、所得金額(年金額から120万円を差し引いた額)から社会保険料や控除額を差し引いた額に、自治体ごとの税率をかけ、調整控除額を引き、一律の均等割りを加えて計算されます。「介護保険」は第1号被保険者の保険料、65歳以上75歳未満であれば「国民健康保険料」が引かれます。天引き額はおおよそ額面の85~90%ほど。年金月19万円であれば、16万~17万円ほどと、額面から2万~3万円ほど引かれる計算です。
収入の多くが年金となる老後。月数万円の誤差は、大きすぎます。「ねんきん定期便」に記載されている将来の年金額からさらに低く見積もって老後をプラニングしていくといいでしょう。