新入社員の3割が3年以内に退職する、とはよくいわれることですが、退職者のなかの少なからぬ人が「非正規社員」という働き方を選択しています。「自分らしい生き方」を求めてサラリーマンを辞め、しがらみの少ない「非正規社員」の道を選んだ人には、どんな未来が待っているのでしょうか。詳しくみていきます。
「自分らしく生きる」と“非正規”にシフトした20代・会社員…65歳で顕在化する<致命的なリスク> (※写真はイメージです/PIXTA)

「サラリーマン辞めました」…自分らしい人生を手に入れた代償は?

「自分らしく生きるために、サラリーマン(正社員)を辞めました」

 

SNSにそう投稿したのは、新卒1年目・新入社員だったという20代男性。ひと昔前の考え方からすれば、「大学を出たのに、1年も経たずに辞めるなんてもったいない」と考える人も多いかもしれません。しかし、20代であればまた正社員に復帰できる可能性も高いですし、仮に「正社員」という働き方が苦痛で、心身が悪影響を受けているような状態であれば、むしろ積極的に退職すべきだったともいえます。

 

ところで、正社員を辞めてしまうのは本当に「もったいない」のでしょうか。正社員と非正規社員の給与差についてみていきましょう。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によれば、大卒・男性会社員の給与は、20代前半・正社員で月22万7,600円。一方、非正規の場合は同じく20代前半で月21万4,400円と、月の給与差はわずかです。しかし、年収では正社員が346万1,700円、非正規が293万8,500円と、ボーナスや残業代を受け取れない非正規社員は、正社員に比べて50万円ほど少なくなります。

 

年収にして50万円程度の違いなら、よりフレキシブルな働き方ができる非正規社員を選択する人は多そうです。

 

それでは、給与は安定しているものの、重い責任を背負ってストレスの多い正社員と、収入は少なくても自分の時間を確保しやすい非正規の10年先、20年先の給与事情を比べてみましょう。

 

正社員を続けていけば、30代前半で月収は30万円、40代前半で40万円、50代前半で50万円を突破し、50代後半に年収850万円超とピークを迎えます。加えて、企業によっては2,000万円超の退職金を手にすることも。正社員の給与は20代から50代に向けて2~2.5倍程度に増えていくのに対し、非正規社員の給与の上がり方は非常に緩やか。ピークは同じ50代ですが、その頃でも月収27万3,500円、年収は344万6,700円。給与は20代から1.3倍ほどに留まります。

 

多くのサラリーマンが定年を迎える60歳までの生涯賃金を比較すると、正社員で居続けた人は約2億5,000万円。一方、20代前半から非正規にシフトした人は約1億2,000万円。約2倍もの差が生じます。これだけの差をみせつけられてもなお、「自由に生きるほうが大事」といえる人は少数派かもしれません。