完璧な終活をしても、最期の最期でトラブル発生⁉
厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金額は65歳以上男性で16万9,006円、女性で10万9,261円。さらに貯蓄は1,600万円ほど(総務省『家計調査報告』65歳以上貯蓄額中央値)。これが日本の高齢者の平均像。これらで老後をやりくりし、いつか訪れるそのときのために「終活」を行います。
りそな銀行『第4回お葬式に関する全国調査(2020年)』によると、葬儀費用の平均は149万3,624円。また株式会社鎌倉新書『第12回お墓の消費者全国実態調査』によると、一般墓の平均購入価格は169.0万円、樹木葬だと71.7万円、納骨堂だと91.3万円だといいます。
残される家族が、きちんと見送ることができるよう、意思を伝えつつ、きちんと“お金”を準備しておくことが重要です。
しかし完璧な終活を行ったも、どうにもならない事態が起きようとしています。2040年には、170万人近い人が亡くなる日本。そこで心配されているのが火葬場の不足です。特定非営利活動法人日本環境斎苑協会によると、全国の火葬場は、1988年度には1,921ヵ所だったのが、1995年には1,607ヵ所、2010年には1,545ヵ所、2018年11月時点で1,454ヵ所。この30年ほどで大きく数を減らしました。
特に都市部での火葬場の不足は深刻です。厚生労働省『2019年度衛生行政報告例』によると、全国で恒常的に使用している火葬場は1,392施設。人口10万人あたり、最も多いのが「島根」で3.87施設。「岐阜」「山口」「北海道」「香川」と続きます。一方で最も少ないのが「東京都」で0.19施設。「神奈川」「埼玉」「愛知」「千葉」と続きます。1位の「島根」と47位の「東京都」では20倍もの差があるのです。
昨今、亡くなって火葬するまで混雑しているときは2週間待ちというときも。その間、遺体安置所で待つことになりますが、その費用は1日1万~3万円程度。さらにドライアイス代が別途1日1~2万円程度かかるので、もし2週間、遺体安置所で待機することになれば、50万~70万円ほどかかる計算となります。しかも遺体安置所も不足気味だというので、行き場を失った遺体がさまよう事態に……怪談のようなことが実際に起きようとしているのです。
ーー2週間も放置されたら、私たち、天国になんていけないわね
そんな80代婦人のつぶやき。亡くなった後も大問題に直面することになる日本人ですが、なぜここまで、火葬場や遺体安置所が不足しているのでしょうか。そこはやはりイメージ。火葬場や遺体安置所の反対運動というニュースを耳にしたことがあるでしょう。
ーー近くに火葬場や遺体安置所があるのはいや!
ーー火葬場が近くにあると不動産価値が下がる!
そんな住民の声に、ニーズは高まっているのに、新たに作ることができないできないのです。都会の火葬場不足は住民理解による新設以外に解決策はなく、それまで既存の施設に頑張ってもらうしか方法はないようです。