住宅ローンの理想的な返済比率は20~25%程度、また金融機関がローン審査の目安とする返済比率は30~40%程度といわれています。しかし、たとえ「理想的な返済比率」の範囲内であっても審査にとおらない場合があると、FP Office株式会社の森幸江FPはいいます。具体的な事例から「住宅ローン審査で金融機関が重視するポイント」をみていきましょう。
年収950万円だが…銀行員「残念ですが、貸せません」31歳エリート商社マン、4,500万円の住宅ローン〈謝絶〉のワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんが「謝絶」となった原因

①不動産投資ローン

結婚前の26歳の時、友人にすすめられて投資用物件を2室購入していました。その物件購入時に「不動産投資ローン」を利用していたのです。

 

2室とも都心の駅徒歩5分以内の中古ワンルームマンション。購入金額はそれぞれ1,800万円と1,500万円。どちらも全額ローンを利用しており、現在1,450万円と1,250万円、計2,700万円のローンが残っていました。

 

今回、住宅ローンの申込金額は4,500万円。あわせて7,200万円の借入となってしまうのです。

 

銀行では借入申込を受付した際、他行で借りているローン残高も合算した金額で審査を行っています。

 

Aさんは、「住宅ローンで4,500万円を借りるだけ」と思っていましたが、実際には不動産投資ローンの残高も返済負担率のなかに組み入れて審査されるため、返済負担率が高くなっていることに気が付いたのです。返済負担率を計算する際には、奨学金やカードローン、マイカーローンなどの借入もすべて含まれます。

 

②転職して5ヵ月

転職後1年経過していない場合、年収は転職後の給与をもとに見込み額で算出されます。ボーナスをまだもらっていないタイミングでは、実際の年収よりも低く評価される場合があります。

 

③信用情報に履歴が残っていた

信用情報とは、クレジットや各種ローンの申込や契約に関する情報のことで、客観的な取引事実を登録した個人の情報です。

 

信用情報は、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3機関で取り扱われており、それぞれで取り扱っている情報の種類が異なります。

 

たとえば、クレジットカードや携帯電話料金などの支払状況等の情報はCIC、カードローンなどの履歴情報はJICC、銀行ローンなどの情報はKSCというようになっています。

 

取り扱う情報は各機関で異なりますが、それぞれの機関で情報共有を行っているため、たとえば、クレジットカードにおける情報の場合でもCICだけでなく他の機関(JICC、KSC)にも知られているということになるのです。

 

情報として、ローンやクレジットカードの申込状況や契約内容、返済情報(正常な支払い、延滞、滞納)などの記録が残ります。

 

Aさんは以前、携帯電話料金の支払い用に使用していたクレジットカードを解約してしまい、携帯電話会社からの督促に気付くまで4ヵ月間にわたり携帯電話料金を支払っていなかった時期がありました。そのため「異動情報」として記録が残っていると考えられます

個人信用情報への掲載
遅延情報・・・返済日から数日~3ヵ月未満の遅れ
異動情報・・・約定返済日より61日以上、または3ヵ月以上の延滞

 

[図表]住宅ローンで重視される項目 ※「令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」をもとに筆者作成
[図表]住宅ローンで重視される項目
※「令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」をもとに筆者作成