必死に働いても、老後生活を支えるに十分とはいえない年金額。定年後、夫の年金を頼りに暮らしていた専業主婦の女性は、夫の急逝で生活が一変。受給できる年金額が大きく目減りすることを知り、困り果ててしまいました。FP Office株式会社の久保雅巳FPは、Bさんにどのような助言を行ったのでしょうか。みていきます。
年金“月23万円”の60代夫婦、67歳夫の急逝で年金受給額が激減…66歳の妻「もう、ムリ」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦仲良く年金暮らしも、突然訪れた悲劇

転勤族の夫Aさんは、1歳年下で専業主婦の妻Bさんとひとり娘の3人家族です。Aさんは全国転勤の会社に勤めており、その企業には家賃補助もあったため、これまで持ち家はなく賃貸住まいを続けてきました。ひとり娘はすでに遠方に嫁いでいます。

 

定年を迎えたあとは、妻と2人、賃貸マンションで細々と年金暮らしの日々です。

 

しかし、そんなある日のこと。67歳のAさんががんで急逝してしまいます。A夫妻は2人で月25.6万円の年金を受給していましたが、夫を亡くしたことで年金受給額は減少。遺族年金を含めても、Bさんの月々の収入は大幅に少なくなってしまいました。

 

さらに、慣れない手続きが続いたことでBさんは心身ともに疲弊。Bさんは困った末、知り合いのツテを頼って筆者のFP事務所へ相談に来られました。

夫が急逝…のこされた妻が受け取れる年金の金額は?

夫が先に亡くなった場合、のこされた妻は遺族年金を受け取ることができます。この遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。

 

65歳以降の遺族厚生年金額は、原則下記の式にしたがって計算します

※ 経過的寡婦加算が加算されるのは、昭和31年4月1日以前生まれの妻のみ。令和3年4月以降に65歳になる人には加算はありません。

 

遺族厚生年金額=(夫の老齢厚生年金の報酬比例部分)×4分の3+(経過的寡婦加算)

 

ただし、老齢厚生年金のある妻の遺族厚生年金は少し複雑です。ご自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給したうえで、以下の遺族厚生年金を受給することになります。

 

遺族厚生年金の受給額=「上記計算の遺族厚生年金額-「自分の老齢厚生年金額」

 

したがって、A夫妻の受給額は下記のとおりです。

 

<夫A>

基礎年金:79.5万円

厚生年金(報酬比例部):120.5万円

合計:200万円

 

<妻B>

基礎年金:79.5万円

厚生年金(報酬比例部):28.5万円

合計:108万円

……夫婦合計:年金額308万円(月額25.6万円)

 

夫Aさんが亡くなり、妻Bさんの遺族厚生年金額は

 

120.5万円×4分の3=90.3万円

90.3万円-28.5万円=61.8万円

 

これにBさん自身の年金を加え、

 

61.8万円+108万円=169.8万円/年

 

妻Bさんが受け取る年金は年額169.8万円(月額14万円)となり、夫婦2人のときより年間でマイナス138万円(月額マイナス11.6万円)となってしまいました。