将来を見据えて話し合っていた夫婦に悲劇…残された妻が手にする年金額は?
20歳でサラリーマンとなって以来、ずっと平均的な給与を手にしてきた59歳の男性がいたとしましょう。厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、59歳のサラリーマンの平均給与は月収で41.6万円、年収674.0万円。サラリーマン人生史上、給与は最高額に達しているころです。そんな年に届く「ねんきん定期便」には、65歳からの年金支給額として、老齢厚生年金が月10.3万円、国民年金が満額支給だとして月6.6万円。併せて月16.9万円ほどの年金が支給されると記載されているでしょう。
同じように、奥さんが20歳からずっと専業主婦だとすると、夫婦で手にする年金は月23.5万円ほど。手取りにすると月20万〜21万円ほどです。
ーー少し節約すれば、年金だけでも生活ができそう、足りないときは貯蓄を取り崩せばいいかな
そんな未来図が見えてきます。しかし、人生、想定通りにいくことなどほとんどありません。
ーーあっ、あなた!
もうすぐ定年だというある日、サラリーマンの夫が急逝。ありえない話ではありません。
ーーちょっと前に、二人の老後について話していたところだったのに……
号泣の妻。「1人でなんて、生きていけないわ」と不安となり、涙が止まらなくなるでしょう。
残された家族、その生活を支えるのが遺族年金です。大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、支給対象となる遺族や受給要件などはそれぞれ異なります。急逝した夫の年齢を考えると、子どもは成人を迎え、遺族基礎年金は支給の対象外の可能性が高いでしょうか。一方、遺族厚生年金は支給の可能性が高いと考えられます。
遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。定年間近の59歳で急逝したサラリーマン、その妻が受け取れる遺族厚生年金は月8.4万円程度。さらに中高齢寡婦加算(59万6,300円/年)も上乗せされ、月13.3万円程度を手にできると考えられます。
また65歳となり、自身が老齢基礎年金を受け取れるようになっても、遺族厚生年金は支給され続けます。自身の年金6.6万円と、遺族厚生年金8.4万円、合計15万円程度を手にできる計算です。さらに生命保険などの備えもあれば、子育てを終え、老後を見据えるおひとり様にとっては十分。涙が止まらなかった妻も、思わずニッコリ。「ありがとう、あなたのおかげだわ」と、天国の夫に笑顔を浮かべることができる年金額です。
「これでは足りない!」と話題になることが多い遺族年金。しかし子どもが成人し、あとは老後を見据えるだけ、という段階では十分といえるケースもあるようです。ただし子育て、さらに老後の生活まで見通すには遺族年金だけでは不十分。ライフステージにあった備えが必要です。