座右の銘は“いまを楽しむ”だった現役時代
いまを楽しみすぎて…貯蓄は「個人年金」と「退職金」のみ
Aさんは独身だったため、結婚して子どものいる同僚や友人と比べると、自由に使えるお金が多くありました。そのため、週の大半は外食をし、遊びに出かけることも多かったようです。
計画的な貯蓄はせず、“いまを楽しむ”というスタンスで生活してきました。
40代に入ってからようやく、「毎月2万円くらいは」と個人年金を開始したものの、貯蓄というと、この個人年金と後述する退職金がすべて。Aさんは75歳のいまになって、「もう少し貯蓄をしていれば」と後悔しています。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」によると、40代の単身世帯の35.8%が金融資産の保有なしというデータがあります。
なお、ここでいう金融資産とは、「定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため・または将来に備えて蓄えているもの」を指しているため、現預金で日常的に出し入れするものや、引き落としに備えるものは含まれていません。しかし、実に3人に1人が将来の資金準備ができていないというのが現状です。
このような現状に早いタイミングで気づき、計画的な資産形成を行っていれば、Aさんもこうした事態を防げたかもしれません。
退職金があっても「老後破産」の危機
個人年金満了にともない不安を覚えたAさんですが、60歳の退職時に、1,000万円の退職金を受け取っています。そこから、引っ越しや家電の買い替え、念願の海外旅行に200万円を使いましたが、残りの800万円に関しては「本当に困ったときに使おう」と、生活費とは別の口座に残しておきました。
この貯蓄があることから、今後も生活を変えずにここから毎月3万円を取り崩しても大丈夫だろうと考えているAさんですが、果たして本当に可能なのでしょうか。
現状のAさんの家計の収支は、[図表1]のとおりです。
また、個人年金受け取り終了後の収支をシミュレーションしてみると[図表2]のようになります。
シミュレーションの結果、毎月3万円を取り崩していくと、資産は85歳で枯渇してしまうことがわかりました。
日本人男性の平均寿命は81.47歳ですから、一見「このままでも良いのでは?」と考えるかもしれません。
しかし、Aさんには今後医療費の出費が想定されます。Aさんの収入ですと医療費は75歳から原則1割負担となりますが、厚生労働省「医療保険に関する基礎資料(令和2年度の医療費等の状況)によると、75歳以上の医療費(1人あたり)は平均で年額7万2,839円かかります。
そのほか、自身に介護が必要となった際の費用など「もしもの出費」を考慮した場合、85歳よりも前に資産が枯渇してしまう可能性は十分に考えられます。生きながらにして「お金が足りない」という事態を避けるには、もしもの出費もふまえて備えておく必要があるでしょう。
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