“一括投資で一攫千金”…退職金2,000万円をつぎ込んだ結果
一括投資は積立投資と比べ、短期間で複利効果を得やすいため、まとまった資金が手元にある際には、大きく資産を増やすことも可能です。しかし、退職金などで、まとまった資金が手に入り、念入りに情報収集をして一括投資を始めたとしても上手くいかないことが多々あります。
この際、重要なポイントとなるのは「リスクを正しく理解すること」です。リスクを正しく理解しなければ、セカンドライフが明るくなるどころか、想定していなかった値動きに心が追い付かず不安を抱えた日々を過ごすことも……。
上昇局面で大きな差が出る「一括投資」
投資商品の上昇局面では、一時金の運用(一括投資)により、値上がりが期待できます。例えば1,000万円を一括投資し、年利5%で10年間運用した場合、約1,630万円になりますが、同利率で年間100万円の積立投資を行った場合、約1,300万円と差が出ます。
これは、一括投資の場合は1,000万円全額に5%の利率が計算されるのに対し、積立投資の場合は、1年目に積み立てた100万円のみに5%の利率が計算され、残り900万円には利率が付かないためです。したがって、投資商品の値動きが右肩上がりの場合には、一括投資が有利です。
手元にまとまった資金がない場合は積立投資しかできませんから、一括投資はまとまった資金がある方ならではの運用方法といえます。
年5~6%の利回りに期待…YouTubeを鵜呑みに退職金を全額投資したAさん
Aさんは、2021年に60歳で長年勤めた会社を退職し、2,000万円の退職金を受け取りました。その後は銀行に預金として置いていたものの、インフレによる価値の目減りも気になり、2022年から投資を始めようと思い立ちました。
何に投資をするかヒントを得るため、YouTubeや書籍などで少し情報収集をして見たところ、「全世界株式での運用は5~6%の利回りが期待できる」との情報が多いことに気づきました。そこでAさんは、「多少の値動きがあったとしても5~6%で増えるなら……」と考え、全世界株式インデックスへ預金していた2,000万円を投資しました。
ところが、Aさんが投資を始めた2022年1月から世界全体の株式市場が下落し、1月末には損失が140万円(-7%)に。2月初旬には損失が60万円(-3%)まで回復するも、3月初旬には損失が260万円(-13%)に膨らみました。
損した状態で売却したくないと考えていると、4月中旬には利益が60万円(+3%)に。安心したのも束の間、6月中旬には損失が200万円(-10%)程度になりました。その後は上下を繰り返し、結局損失が140万円(-7%)の状態で年末を迎えることになりました。
投資をして1年。「こんなに値動きがあると思わなかった」と後悔するものの、売るタイミングもわからず、Aさんは今も不安を抱えた日々を過ごしています。
退職金の運用投資に失敗する人の「3つ」の特徴
Aさんのように、退職金でまとまったお金が入ったことをきっかけに投資を始めても、結果的に運用で失敗してしまう人は少なくありません。失敗する人には、以下のような特徴があります。
「年率リターン」のイメージが適切でない
Aさんのようにリターンにばかり意識が向き、リスクに対しては「多少の値動きはあるのだろう」と漠然と捉える方は少なくありません。年率5%の運用であれば、実際には10%上がる年、20%下がる年、15%上がる年……このような上下を繰り返した結果、「振り返ってみたときに平均して毎年5%ずつ増えていた」と実感できるのが実際のところです。
リスクへの理解がない
後述しますが、リスクとは「価格の振れ幅」のことを指します。リスクとリターンは、基本的に表裏一体です。つまり、リスクを抑えた値動きの少ない運用をすれば、安心感はあるもののリターンも低くなりますし、リターンを追及しようとすると、値動きの幅も大きくなります。
リターンはあればあるほどいいですが、どの程度のリスクであれば自分が許容できるのかを把握しないまま運用すると、Aさんのように「こんなに値動きがあると思わなかった……」と後悔することに繋がります。
安易に運用を始めてしまう
退職金のようにまとまった資金が入ると気持ちにも余裕ができ、「少しでも増やせたら……」と自身の投資経験がない運用にも関わらず始めてしまうケースがあります。運用すること自体は良いことと思いますが、安易に始めてしまうと思わぬ下落に悩むことになります。
また、現役時代なら多少失敗しても継続的な所得がありますが、退職後は多くの場合、収入源となるのは年金だけ。せっかくのセカンドライフを楽しむどころか不安なまま過ごすことにもなりかねません。
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