低賃金で話題になることが多い「非正規社員」。なかには、目の前の生活もままならず「生活保護」を申請する人もいます。厚生労働省によると、生活保護受給者数は2022(令和4)年3月時点で203万6,045人。しかし、生活が苦しくてもそう簡単には申請が認められないという現実もあります。本記事では、Hさんの事例とともに、生活保護制度の現状について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
手取り月6万円の51歳・高卒非正規、介護が必要な両親の年金月9万円…「もう限界」でも、〈生活保護申請〉で門前払いのワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活保護受給を相談に行ったが…門前払いの結果に

Hさんが、生活保護の受給を考え行政に相談に行ったところ、「認められない」と下記のような返答をされました。

 

「生活保護は、原則、世帯を単位として判断されます。世帯の全員が支給を受けるためには、資産・能力・そのほかあらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを前提としています。例として、不動産、自動車、預貯金等のうち、直ちに活用できる資産がある場合、売却等し生活費に充てること。就労できない場合を除いて、就労が可能な人は、その能力に応じて働き、生活費を得てください」

 

Hさんには築50年を超える2DKの貸家に住んでおり、預貯金はありません。ですが、両親の送迎をするための中古の軽自動車があり、Hさん自身、就労可能であると判断されたため、生活保護は認められませんでした。

 

「社会保険に加入していないので、傷病手当金はありません。修繕してもらえないボロ家に今後も住み続けるしかありません。うつ病と診断されても医療費が払えないため、継続通院することもできずにいます……。両親の介護も重なり、もう本当に限界です」Hさんは悲痛な思いを吐露します。

 

東京都で3人世帯(90歳・87歳・51歳)での生活保護費が約20万円(東京都1級地-1)とすると、Hさんの給与と両親の年金の合計額15万円は、生活保護費より少ないのです。

 

Hさんは、まず、自身の病気を治すために病院で診察を受け、必要に応じて障害年金の請求を視野に考えます。また、両親との生活について、1人で抱え込まないように、行政に再度生活保護の申請を含め、相談できる窓口を利用することをお勧めします。

 

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表