国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなったときに遺族へ支給される「遺族年金」。もしも、残された遺族に老齢年金の受給権もある場合、妻は遺族年金と老齢年金の両方をもらえるのでしょうか? 本記事では、Aさん夫婦の事例とともに年金受給者の遺族年金について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
これでは働くほうが損…元共働き「年金月30万円」の67歳同い年夫婦、夫の早死にでゆとりの老後が一転。妻が受け取る「耳を疑う遺族年金額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期に受け取る標準的な「夫婦2人分の年金額」

日本の夫婦の考え方は、「夫が外で働き、妻が家庭を守るべきである」が一般的であった時代から、1997年以降、共働き世帯が増え、女性の社会参加が増加しています。

 

公的年金では、高齢期に受け取る標準的な夫婦2人分の年金額は、22万4,482円であり、毎年厚生労働省が発表している金額です(Press Release「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」)。

 

この金額は平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。厚生労働省のモデルケースでは上記の「夫が外で働き、妻が家庭を守るべきである」夫婦の年金額です。

 

では、共働き夫婦では、どのように変化するのでしょうか? 今回は、共働きAさん夫婦の67歳夫が急死した事例を紹介します。

 

年金収入だけで暮らしていける、元共働きのAさん夫婦

Aさんは、地方の中堅大学を卒業後、中小企業であるB製造会社に入社。60歳で退職、再雇用制度で65歳までB会社で働きました。一方、妻も同様に大学卒業後に、夫と同じ会社に入社、65歳まで仕事を続けました。2人はいわゆる職場結婚です。

 

B製造会社は職場結婚を推奨しています。長く働く人材を求め育成をしているためです。この会社では60歳で定年、65歳まで再雇用制度で働くことができます。

 

同期入社のAさんの妻は2人の子を出産。その際、産休・育休を取得、保育園の空きがなく、2歳まで育休を取得してから職場復帰することができました。日ごろから、お互い健康には気をつけ、2人でセカンドライフは楽しく旅行しながら楽しもうと頑張って仕事を続けてきました。Aさん夫婦の65歳からの公的年金額は次のとおりです。

 

夫:

20歳から就職まで国民年金に加入。22歳から65歳まで、厚生年金保険に510月加入、平均標準報酬額月額41万円。

 

妻:

20歳から就職まで国民年金に加入。22歳から65歳まで、厚生年金保険に460月加入、平均標準報酬額月額34万円。

※保険料の免除は考慮せず

 

[図表1]Aさん夫婦の65歳から受け取る公的年金額

 

老齢基礎年金:2023年度新規裁定者満額

老齢厚生年金:平均標準報酬月額×5.481÷1,000×加入月数で計算

2人の合計額:359万3,305円(月額29万9,442円)

※加給年金、差額加算は考慮せず

 

厚生労働省のモデルケースと比較すると、共働きであるAさん夫婦は公的年金で日常生活費が賄え、ゆとりある生活を送れそうです。退職金は大手企業に比べると少なかったのですが、退職金と貯金をあわせて3,500万円あり、住宅ローンは2人でコツコツと返済し、65歳までに完済しました。