消費意欲旺盛なパワーカップルのマンション選び
一方、2人の収入を合算してマンション購入を考えるとどうなるでしょう。上にみた基準を当てはめてみると、合算年収1,760万×5で借入金額は8,800万円まで。月々の返済は29万~37万円ほどであれば、無理のない返済プランといえます。収入上位10%に入るような勝ち組夫婦の場合、頭金として物件価格の1割強の自己資金を準備すれば、都心の新築マンションも十分に視野に入りそうです。
上にみた2組の夫婦。夫婦どちらか1人の収入であろうが、2人の合算収入であろうが、「基準値」に収まる返済プランなのだから問題はないと考えるのは早計かもしれません。2馬力で高級マンションを購入した夫婦のほうが、「余裕」だと思っていたローン返済が行き詰まるリスクが高いことは想像に難くないでしょう。
1馬力と2馬力、ともに余裕ある住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額には10万円以上の差が生じます。
1馬力であればどちらか一方が収入減となってもカバーできますが、2馬力のプランではそうはいきません。収入減によって家計はあっという間に火の車となり、最悪の場合は住宅ローンを返済できず、せっかくのマンションを手放さなければならない事態に陥ります。世帯年収ベースでローンを組むと、リスクは途端に高まるのです。
また、上記のような勝ち組夫婦、いわゆる「パワーカップル」と呼ばれる世帯には消費意欲が旺盛という特徴があります。彼らは「少々高くても、グレードにはこだわりたい」という意識が強く、「2人で頑張れば大丈夫だろう」という返済プランを組みがちなのです。
よく言われる返済負担率の限度は35%。年収1,700万円であれば、金利年0.5%として、月返済額は50万円強、20年返済でも1億円程度の借入も不可能ではありません。返済期間中に収入が大きく減少するようなトラブルがなければ、たしかに返済を続けていくことはできますし、むしろ勤め先で経験を積んで役職に就けば、年収アップも見込めます。
ただ、日本では夫婦3組に1組が離婚に至るという現実や、誰にも予想できない病気やケガ等のトラブルで働けなくなる=収入が途絶える可能性を考慮すると、「2人で頑張れば返していける」という水準のローンを組むことがいかにリスキーな行動かがわかるのではないでしょうか。
加えて、一度高まった生活水準を下げるのが難しいというのは、もはや常識。サラリーマンを引退した後、世帯の収入が大きく減ったときのダメージを和らげるためにも、稼いだ金額をフルに使って良い暮らしを実現するというライフスタイルは、あまり推奨できるものではないのかもしれません。