綿密な資金計画のもと、終の棲家として「老人ホーム」に入居。安心できる毎日が続くと思っていた矢先、月利用料滞納の事実が発覚。なぜ、どうして……そこにあったのは家族の裏切りでした。みていきましょう。
許さない!年金16万円・80代男性「老人ホーム月額利用料」まさかの滞納…退去勧告に潜む〈家族の裏切り〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

もう、出ていって!老人ホームから「退去勧告」主な理由

完璧なマネープランのもと希望していた施設に入居。安心して身を委ねる毎日が始まる……しかし、老人ホーム側から「出ていってください!」と入居者に退去を勧告するケースがあります。基本的に入居契約書の退去要件に沿って勧告は行われますが、その理由は大きく分けて4つ。

 

まずは入居者やその家族による、暴力行為や迷惑行為。いわゆるカスタマーハラスメント。厚生労働省『介護現場におけるハラスメントに関する調査研究報告書』によると、

 

●680名程度の利用者に対して、ハラスメントとして職員から報告されて認識しているものは年に1~2名程度の利用者

●現在、250名の利用者のうち2~3名がハラスメント行為を行う利用者である

 

という報告があがっています。数としては少数ではあるものの「俺は契約者だぞ!」などと権利意識の強い入居者による暴力や暴言などで、退去勧告がされるケースは珍しくありません。

 

そして医療依存度があがったり、長期間の入院となってしまった場合を退去要件をしている施設も。この場合、対応可能な施設や療養型病院への転居を検討する必要が出てきます。

 

そして、利用料が払えなくなった場合も当然、退去勧告の対象になります。本人に支払い能力がなければ連帯保証人や身元引受人に督促がいきますが、利用料金を数ヵ月滞納している場合や、支払いの見通しが経たない場合は退去の対象となります。

 

――俺は、年金だけで月利用料金を払える施設を選んでいるから大丈夫

 

そう考えている80代の高齢者男性。入居前に綿密な資金計画を立てていれば「利用料金の滞納なんて関係ない」と考えるでしょう。しかし、思いもしなかった事態に巻き込まれるケースは多いといいます。

 

――残高不足で利用料金の引き落としができません。滞納状態が続いています

――はあ⁉ 年金の振込口座からの引落しされるようにしてあるから、そんなことあるわけが……

 

原因は入居者の家族。財産管理を家族に任せている場合、入居者の年金をあてにし、使い込んでしまう……残高不足で引落しができなかったり、支払期限までに入金がなかったりして、退去勧告がされることは珍しくないといいます。

 

生活苦からやむを得ずという場合もあれば、親の年金を使い込み贅沢三昧というケースも。家族による年金の使い込みは、入居者の口座の管理をしていることを当事者だけが知っている……そんな状況下で起きやすいといいます。発覚後、滞納分の支払いができればいいのですが、難しければ退去する以外に方法はありません。思わぬ家族の裏切り行為。怒りに震えたところで手遅れです。

 

とはいえ、認知症リスクなどから自身で口座管理をすることに不安を覚える人もいるでしょう。これら含めて資産管理をどうするのか、万が一の時はどうするのかを、老人ホームへの入居時にしっかりと家族と相談しておくこと、さらに口座管理を家族の誰がしているのか、という情報をオープンにしておくことが重要です。