日銀の数値目標「物価上昇率2%」は達成されたが…消費者物価指数を基準とすることの限界
日銀は2013年以降、「物価上昇率2%」が安定的に持続することを目標として、大規模な金融緩和政策をとってきました。この「物価上昇率」は消費者物価指数を基準としたものです。
金融緩和政策というのは、金利をきわめて低い水準に抑えることです。そうすることで、企業や個人が融資を受けやすくなります。また、銀行に預けておいても利息がつかないので株式等への投資が活発になり株価が上昇します。さらに、円の価値が下がるので海外からの投資が活発化します。そのようにして、経済活動を活発にして景気をよくするというものです。
その結果、企業の業績が向上し、物価が上昇し、賃金も上昇するということです。つまり、日銀が設定した「物価上昇率2%」が安定的に持続するという目標は、物価の上昇に、賃金の上昇が伴っていることが前提条件になっています。
実は、「物価上昇率2%」の数値自体は2022年にすでに達成され、その後も継続しています。しかし、これには、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な資源価格・食料価格の高騰と、急激に進んだ円安が大きく影響しています。
この間、賃金は上昇していません。厚生労働省が9月8日に発表した「毎月勤労統計調査」の2023年7月分の結果によると、同月の実質賃金は前年比-2.5%と減少しています。
このように、消費者物価指数を基準とした「物価上昇率」は、あくまで景気が良くなったことを示す一つの判断材料にすぎません。その背景にどのような事情があるのかを見極めなければなりません。また、8月の消費者物価指数にしても、数値だけみるとエネルギー価格が値下がりしているように見えます。しかし、それはあくまでも政府が行っている価格抑制のための政策によるものです。
折しも、8月の消費者物価指数が発表されたのと同じ9月22日、日銀は、政策委員会・金融政策決定会合において、金融緩和政策の継続を決定しました。その大きな理由の一つとして、賃金上昇が伴っていないことが示されています。これは、「物価上昇率2%」という数値が、現在の経済状況の下では、事実上意味をなさなくなっていることを示しています。
このように、消費者物価指数をみる場合、重要なのは、「総合CPI」「コアCPI」「コアコアCPI」といった数値自体ではありません。あくまでも、その数値の基礎にどのような事実があるのかということを見極める必要があるということです。
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