もし大地震がコワイなら?…保険加入以外に「すぐできる」こと
「大地震が来て家が倒れたらどうしよう」と心配している人は多いでしょう。そんな人は、地震保険への加入を考えるのでしょうが、じつは保険会社との契約以外にも地震のリスクに備える方法は数多くあります。
たとえば耐震補強工事をする、頑丈な家に引っ越す、といったことに金を使うことで安心が得られるなら、それは「広義の保険」と呼んでいいでしょう。似たようなことは、老後資金に関してもいえそうです。
南海トラフ大地震への備えとしては、米ドルを持つ、というのも「広義の保険」として有効だといえます。大地震が来れば、復興資材の輸入が激増し、輸入代金としてドルを買う需要がドルを押し上げるため、輸入品がすべて値上がりすることになるでしょう。家が倒れなくてもインフレで苦しむことになるわけですが、ドルを持っていれば、それを高値で売却して生活の足しにできるはずですから。
いちばん困るのは「お金は尽きたが、人生は続く」状況
老後資金に関する最大のリスクは「長生き」です。本来、長生きはよいことなのですが、長生きしている間に老後の蓄えが底を突いてしまうと、その後が苦しくなってしまうからです。
インフレリスクにも要注意です。老後資金を銀行預金で持っていると、インフレが来たときに目減りしてしまう(金額は減らなくても、預金残高で買える物の量が減ってしまう)からです。
最悪なのは、インフレで生活費が嵩むようになり、早期に老後資金が枯渇し、その後も長生きをする、ということでしょう。悲惨な老後が長く続くかもしれませんから。
〈対策1〉長生きのリスクの最強の備えは、やっぱり「年金」
長生きのリスクに対する最強の備えは、公的年金です。公的年金はどれだけ長生きしても、最後までしっかり払われます。しかも、インフレになれば、原則としてその分だけ毎回の支給額が増えますから、老後資金の2大リスクにしっかり備えることができるわけです。
サラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)は、年金保険料を給料から天引きされるので払い漏れは無いと思いますが、自営業者等は自分で年金保険料を支払わないと老後に年金が受け取れないといった事態に陥りかねませんから、保険料はしっかり支払いましょう。
パート主婦(主夫を含む。以下同様)も、厚生年金に加入できるような働き方を選ぶことが望ましいでしょう。サラリーマンの専業主婦は、厚生年金に加入することで年金保険料の支払い義務が生じますが、保険の安心が得られますし、老後に受け取れる年金額と支払い保険料を比べても、平均寿命まで生きれば元がとれる計算になるので、ぜひ。
長生きのリスクに備えるためには、長く働くということも重要です。寿命が延びた分だけ健康寿命も延びているとすれば、元気な間は働くと決めることで「老後」の期間は延びずに済むからです。幸い、少子高齢化による労働力不足の時代ですから、高齢者でも探せば仕事が見つかるでしょう。
専業主婦も、子育てが一巡したら働きましょう。収入を得て老後のために蓄えておく、ということに加えて、厚生年金に加入できれば老後に受け取れる年金額が増えますから。専業主婦が働くことは、老後資金以外の面でも「広義の保険」として役立ちます。たとえば離婚したりサラリーマンが失業したりした場合には、主婦の収入が大いに役立つはずですから。
〈対策2〉インフレリスク軽減を目的とした資産運用
老後資金を全額銀行預金で持っていると、インフレが来たときに目減りします。預金金額は減らなくても、預金残高で買える物の量が減ってしまうのです。つまり、預金はインフレに弱いリスク資産なのです。
それならば、老後資金の一部をインフレに強い株やドルで持っておいた方が安心でしょう。株やドルは値下がりが怖いかもしれませんが、預金もリスク資産なので、様々なリスク資産を組み合わせて持っておけば最悪の事態が避けられる、というわけですね。
株式投資などで儲けようとガツガツするにはリスクを覚悟する必要があるので、ガツガツせずに「米国株の投資信託を毎月一定額ずつ積み立てていく」といった程度がいいのではないかと筆者は思っています。
投資信託であれば、上がる銘柄も下がる銘柄もあるでしょうし、積み立てであれば高いときも安いときも買うことになるので、大儲けは狙えなくても大損を避けることができるでしょうから。
〈対策3〉老後はやっぱり、貸家より持ち家!
老後、借家に住んでいると、長生きしている間にインフレが来た場合に高騰した家賃を延々と払い続けることになります。それは避けたいので、老後は持ち家に住みたいですね。そのためには、現役時代に家を買い、定年退職までに住宅ローンを返済しておきたい所です。
若いうちに家を買うメリットは、「広義の保険」だけではありません。意思が弱い人は老後資金や住宅購入資金を貯めるのが大変でしょうが、それを銀行が手伝ってくれるのです。住宅ローンを借りてしまえば銀行が強制的に毎月引き落としてくれるので、残った金額で倹約しながら暮らす必要が出てくるからです。
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塚崎 公義
経済評論家
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